アマチュアが出場するM-1グランプリ2022
漫才No1を決める有名な番組がある。M-1グランプリというのだが、皆さんご存知だろうか。
私はお笑いがそこそこ好きで、”あれは面白い”だの”これはスベってる”だのと好き勝手言いながら楽しむ素人なのだが、"そんなに言うならお前も笑いをとってみたらどうだ?"とただの批評マンを許さない善意が自らに問いかけた。
というわけで、幼馴染を誘ってM-1グランプリに出場した。
結果は見事に1回戦敗退だったのだが、笑いは甘くないと学ぶことが出来たので貴重な経験だったと思っている。
世の中にはアマチュアでもM-1グランプリに出たいという人がたくさんいるであろう。そういった方々の指標になると嬉しい。
■申込方法
そんなものはM-1グランプリのホームページを見れば分かるのだが、ポイントだけ記載しておこう。
・エントリーシートをDLして、必要事項を記入して郵送。芸名や1回戦の希望参加日(複数回選ばないといけない)など重要事項も含まれるのでよく考えて記入すること。ご自身だけでなく相方の捺印も必要なので注意だ。
・コンビで写っている写真をエントリーシートに同封しないといけない。どんな写真?と我々も迷ったのだが、M-1決勝戦でコンビがガッツポーズを決めているあのイメージでスマホで撮影し、カメラのキタムラで現像した。結果、無事受理されたのでそういった感じで大丈夫なのだろう。
・手書きなので丁寧に書こう。我々は悪筆故にコンビ名が誤って登録されてしまった。
■当日に至るまで
予選は8月からスタートするのだが、厄介なことに
①参加可能な日程を複数選択しなければならない
②かつ自身が出場する日がいつになるかは、本番1w前ではないと分からない。
という状況なので、エントリーシートで希望した日程はすべて開けておく必要がある。
我々は7月の中旬に郵送をして、エントリーNo200番代前半であったのだが、一番早い日程で出場が組まれた。
後述するが、1回戦で予選敗退しても、(今年の場合は)エントリーが早いコンビだけ1回戦に再度挑むことが出来る仕組みがある。
というわけで、エントリーは早ければ早い方が良い。
■我々の闘い
お互い漫才などしたことのないただの社会人である。相方は会社の忘年会などで同僚を沸かせていたらしいが、映画ブログなどを書いているド陰キャである私がそんな経験したことがあるわけもない。
というわけで、準備は綿密にしたいと思っていたが、お互い社会人なので何度もネタ合わせをするわけにはいかない。
したがって、以下のような形でネタを作っていった。
①私がLINEでネタの文章を送りまくる。とりあえず数を稼ぐ
②相方に採用不採用を判断してもらい、採用したものについては相方の赤字を反映していく
③実際に私が音読をして、2分に収まるかどうか(1回戦は2分、2回戦は3分・・・と勝ち進んでいくと持ち時間が多くなっていく)を検討する。2分をオーバーする用ならば原稿を削る。
④7月の下旬、相方と候補に残った漫才(5ネタぐらいだった)を読み合わせる。実際に面白そうかどうかの判断をし、1ネタに絞る
⑤出場日が決定した前日に動きも含めてカラオケで練習することに。その日に至るまでに、録音やら音読やらをしてネタを頭に叩き込んでおく(これは私が真面目な性格だった故であり、相方は特に何もしていなかったらしい。何なら前日にネタを変えたいと言ってきた。頭を抱えた)
⑥実際にカラオケで2.5時間ほどネタの練習をする。ネタの練習をしていく中で、”ここはこうした方が良い”とか”ここは削ろう”などと言った意見が当然出てくる。ここまで動きを含めたリハはしていなかったわけなので、当然っちゃ当然だ。録画などをして客観的に見返したりもした。
⑦当日、14時15分渋谷のシダックスホール集合だったので、12時半ごろから最後のネタ合わせをする。
この時点ですでに流暢にネタが出来るようになっていたので、あまり時間をかけていないにしても(クオリティは別として)舞台に立てる程度のネタが準備出来るということは分かった。
■当日
受付でコンビ名を伝え、参加費の2000円を払うと、エントリーNoが記載された名札(シール)と2回戦および1回戦敗退者の敗者復活参加の通知書(A4ぺら1両面印刷)が渡される。
そしてエレベーターを上がり待合室へ。待合室と言っても"部屋"ではなく、実際に漫才を行う会場を囲うように配置された廊下を"待合室"エリアとしているだけだ。いくつか椅子が並んでいるだけの簡易的な場所。
ただし、そこで着替えなども出来る。
我々は既にスーツに着替えていたのでよかったが、The芸人のような緑色のビビットなスーツを身にまとった方々もいて(プロとアマチュアは混合して出場するので、同じ待合室にプロの芸人がいるのは当然である)、そういった方々は普通に待合室で着替えをしていた。
15分に受付をして、出場は50分だったので、待合室にいた時間は長い。
ボードに紙が張り出されており、本日の審査員の名が3名分連なっていた。放送作家と・・・あとは誰だっけ?緊張であまり覚えていない。
とにかく緊張していたので、相方とずっと壁に向かってネタ合わせをしていた(よく芸人がしている憧れのやつだ)。この時点ではすでにネタは完成されているので全然かまない。
余談だが、1回戦はだれでも閲覧ができる。
前売り券は売り切れていたが、入れ替わりが激しいのか席が空いた分だけ当日券も販売していて、友達が観覧に来てくれた。前売り・当日ともに500円。ハードルが低い。
友人が来てくれたのだが、彼から”ネタ飛ばして地獄になった人がいたから気を付けて”と控室で待っているときにラインが来ていた。それは今言わなくていいだろう。
出場の直前になると、舞台袖にある本当の控室っぽいところに通される。舞台の声はありありと聞こえるし、受けているかどうかもわかる。そんな中出場を待つ5組ぐらいの漫才師が順番に並んでいる。ここまで来ると流石にネタ合わせをしている人は少ない。全身鏡がいくつかおいてあり、ちゃんと身だしなみを確認することが出来る。
我々ももはやここではネタ合わせなどをせず、隣の舞台で行われているであろうネタに耳を澄ませていた。我々の数組前のプロの漫才師が滅茶苦茶なウケをとっていて、思わず僕も笑ってしまった。友人曰く、”10組に1組ぐらいが会場全体が沸くぐらい”の温度感らしい。
んで、本番。前の組が終わると舞台袖のスタッフに「どうぞ」と言われて、舞台に「どうも~」などと言いながら入っていく。舞台に出る前は気が狂うほど緊張していたが、舞台に出てみるともはやネタのことしか頭になく、ミスなくやり遂げることが出来た。
が、視線をどこにやるか、とかそういった類の所作に気が回るほどの余裕はなく、会場はほぼ満席、目の前にカメラが置いてあって、おそらくサクラではなかろうか?というぐらい大きな声で笑ってくれるおじさんがいて大分安心して漫才が出来たということは覚えている。見に来てくれた友達を探す余裕もなかった。
あっという間に二分間。舞台裏にはけて先ほどの舞台袖の待合室の荷物を回収し、撤収というった流れだ。ちなみに1回戦は2分間までのネタが審査対象で、2分15秒を過ぎると警告音が鳴り、2分30秒で強制終了となる。我々は警告音を訊くことなく無事終えることが出来た。
■その後
競馬やら酒やらで時間を潰し、20時からのインスタライブの結果発表を待つ。驚くべきことに、1回戦はその日のうちに当落が確定する。youtubeに動画がアップされるのは上位3組(プロ・アマ問わず)とナイスアマチュア賞をとった組のみ。
ネタ自体は失敗なく終えることが出来たので、謎の達成感があり、まあ通る可能性が0ではないなという状況で20時を迎えることが出来た。恥ずかしながらナイスアマチュア賞ないかな~などと驕った期待も持っていたのは事実だ。
インスタライブではまずアマチュア賞が発表される。親子で参加したコンビであった。”親子には勝てねえよ”などと酒を飲みながら笑う。その後、司会の芸人さんから、淡々と出場順に1回戦突破したコンビ名が読み上げられていく。んで、我々の直前に大うけをさらっていたコンビ名が読み上げられ、我々の前後がごそっと抜けて我々ではない別のコンビ名が読み上げられる。
特に読み上げられることもなく敗退というわけだ。
流石に凹んだが(ノーミスだからと言って通るほど甘くないのだが期待するのが人間である)、まあ所詮は数日準備した程度の漫才だ。少々引きづったが、N次回のカラオケのトイレで知らない学生さんに話しかけられた際にネタにできる程度にはすぐに立ち直った。
”なんか苦しそうですね”
"M-1って知ってます?あれの一次予選落としちゃって"
"え、本物の芸人さん?"
”君は大学生だろう?芸人を目指すのだけはやめなよ”
”ふつう目指さないですけどね・・・”
プロの芸人に謝らないといけない。私はカラオケのトイレの中でのみ、プロの芸人であった。
■反省など
相方の意向に任せたのだが、1回戦のリベンジマッチには参加しないことに決めた。まあやるとしたら来年、とのことだが、もうやることはないだろう。誘ったのは私ではあったが、今度は誘われる側として参加したいものだ。アマチュアが熱量を持ってやるのは中々しんどいので、自分よりやる気のがある人間がそばにいないとモチベーションは続かない。
反省点は、ネタを事前に色々な人に見せて練り上げていく過程をごそっと抜かして我々コンビ間で楽に済ませてしまったことに尽きる。本気ならば誰かに協力を仰いでネタを練り上げなければいけなかったのだ。数日の準備と独りよがりなネタ作りでうまくいくわけもない。
が、2分間のためにネタを飛ばさない程度に準備をし、実際に漫才をし、少なからず会場が受けたことはとても達成感があった。お笑いが好きな人はお笑いをするということの大変さを身をもって知ることにもつながるので、ぜひともお勧めしたい。
少なくとも、”M-1に出ます”と友人に言うだけで大分盛り上がるので、面白のキャラで友人間で通っている人々はネタ作りにいかがだろうか。