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「タッチ」が滅茶苦茶面白いので、感想を書き殴る

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 「タッチ」という有名な作品があるが、8月17日までの期間限定で全話無料で読めるので一気読みした。和也が死んでしまうことや、「浅倉南を愛しています」などの名シーンは知識として持ってはいたのだが、どのような経緯でこのシーンに至ったのかは全く知らなかった。

が、読んでしまうとあのシーンは涙なしでは見れないものであった。いや、和也死亡は結構あっさりしていたかな。

 

とにかく、この感動を記しておきたいので、ブログを書くぞ。ゴリゴリにネタバレを含む。

 

 そもそもタッチは①屈折した三角関係の話であり、②兄弟のコンプレックスを乗り越える話である。世間一般に知名度がある名場面は①に付随するものであるが、②についても描写が素晴らしい。

 

①屈折した三角関係、についてだが、言わずもがな、ヒロイン南ちゃんと、双子の達也と和也の三角関係である。中盤で和也は死を遂げてしまうことになり、以降は甲子園を競り合う新田がライバルポジションに立つことになるのだが、あれは見せかけだ。

和也が死んだあとも、三角関係が続いているこの雁字搦め感が間延びしている感を軽減させている。

タッチは全26巻とラブコメにしては結構長めだが、その間南と達也はくっつくことなく(それに準じた気持ちの交流はあったが、決定的な告白はない)、甲子園行きを決めた後、甲子園での試合が始まる直前に例の「愛しています」というセリフが放たれる。

和也が亡くなるのは序盤なので、その後南と達也の関係が進むかと思いきや、全くそんなことはなく、むしろ南がマネージャーを辞めざるを得ない状況になり、達也も甲子園に向けた野球部の練習に励み始めるので、二人の関係はほぼ平行線のままだ。

ただのラブコメなら何かしら刺激的な展開を作らなければ間が持たないのだが、野球というもう一つの柱があるため、二人が絶妙な関係を続ける期間の長さが気にならない。かつ、達也が死んだ和也に負い目を感じ続けているという一貫した彼のキャラクターが、その進展しない二人の関係の裏付けとなり、読者にストレスを感じさせない。

そして貯めに貯め、甲子園出場の夢も果たし、その後に達也が一瞬芸能人に好かれるというモテパートも挟み、ようやくとどめとして南に愛していますと伝えるシーンのクライマックス感は見事なものであった。

 

んで、私がビックリしたのが、②の兄弟のコンプレックスを一貫して描き切るってところなんだが、中盤に出てくる柏葉英二郎の存在がとても良い。彼は達也が所属する学校の監督として起用されるのだが、元々優秀な兄に比べられて落ちこぼれてしまった野球部OBであり、徹底的なしごきを与え、甲子園出場ギリギリのタイミングで監督の裁量で敗退させようと考えていたとんでもない悪党であった。しかし、実際に甲子園に向けてコマを進めていくと、選手たちから(達也と南は彼の策略に気づいていた)の信頼も厚くなり、元々彼の兄を起用しようとしていた野球部監督(病気で一時的に監督を退くにあたり代理を依頼したという設定)も最終的には英二郎を信頼し甲子園出場まで監督代理を依頼するという展開となる。

そうなると復讐する気満々で指導していた英二郎も心変わりをし、甲子園出場を決めるライバル新田との仕合においては、劣等感を抱え続けた弟として、弟への劣等感を抱え弟の代わりをなそうとした兄である達也のメンターとしてしっかりと機能していた。結果甲子園を決めた際の試合のボールも目の手術を受ける英二郎に達也が渡していたし、結果としてそれぞれの形で兄弟の関係に歪を持っていた主人公と師匠が野球への想いを叶えたというシナリオがとても美しい。

 

といった感じで私が柏葉英二郎を好き好きするというオチで終わってしまったが、タッチ、面白いのでぜひ読んでいただきたい。