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「恋するワンピース」「コビー似の小日山」から考える「パロディ漫画」。

ONE PIECEは私が最初に好きになった漫画であり、今でも先輩からいただいている回し読みジャンプで毎週追いかけている漫画でもある。

私はジャンプ+という無料で漫画が読めるアプリを愛用しており、そこにONE PIECEのスピンオフ(パロディギャグマンガ)が2本掲載されている。

ONE PIECE コビー似の小日山 〜ウリふたつなぎの大秘宝〜」と「恋するワンピース」という作品なのだが、両者とも好きな作品なので、紹介したい。

が、後者の「恋するワンピース」が本命である。この作品、ジャンプ+の現在の連載の中でも上位に食い込む面白さだと思う。

 

月曜日連載 : ONE PIECE コビー似の小日山 〜ウリふたつなぎの大秘宝〜

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コビー(海軍入隊前)に似ているがONE PIECEを知らないため自覚がない小日山をONE PIECE好きな友達が弄り倒す四コマ漫画(最近は小日山がついにコビーに似ていることを自覚した)。

小日山中心の話だけではなく、ミスターワン似の男を中心とした話(気が弱いミスターワン似の学生が不良に絡まれるとか無駄に恐れられるみたいなネタが多い)、不愉快なマルコ似の男を中心としたオフィスでの話などが毎話ローテーションを組んでいる形での連載だ。

ページ数も多くなく、何より四コマなので読みやすい。すらすらと引っかかりがなく読めるのであるが、どうも爆発力にかけてしまう。

まんがタイムきらら系のネタとしては面白くなくキャラクターをひたすら愛でる漫画があると思うのだが、作品としての方向性はこちらに近しいかもしれない。キャラクターの魅力を構築し、小笑いや"萌え"をコンスタントにとっていくような作品(少年漫画かつ登場人物の多くが男性の漫画がこの構造でよいのか、という議論は必要であるが)。

 

ネタとしての面白さが追求しきれないのは、表現方法が限られており、オチをコンスタントに生み出さないといけない四コマ漫画での限界があるので仕方がないのだが、登場人物のキャラクター立ちはしっかりしているので、長く愛される作品にはなれそう。原作がある分、原作キャラクターと、それに憑依している「小日山」のキャラクターのギャップで、原作をある程度理解している人にとっては永遠に面白い作品になっているのではないだろうか。

私はジャンプ+で連載している毎日1話更新の「猫田日和」を愛してやまないのだが、「小日山」も毎日1話で読者が触れる機会を増やした方が良いような気がする。1週間作品から離れてしまうのが惜しい。

 

日曜日連載 : 恋するワンピース

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私が愛してやまない漫画である。

「山本海賊王(ルフィ)」というキラキラネームを授かった無害良いやつ系男子に恋をする「小山菜美(ナミ)」が本作の主役かつ唯一のツッコミ役を担っている。

ONE PIECEを愛してやまない「中津川嘘風(ウソップ)」と呼ばれるクレイジーな男が本作の主要なボケ役であり、彼が比較的まともな上記2名を巻き込み「海賊部」を発足。後々その他メンバー(ゾロ/サンジ/チョッパー/ブルック/尾田栄一郎など)に該当するキャラクターも作中に登場するのだが、主要メンバーは基本上記3名。

 

漫画を読んでいただくのが手っ取り早いのだが、嘘風は「自らの行動を全てワンピース準拠で行おうとする」かつ「現実で起きた出来事を、無理矢理ワンピース風に解釈する」ため、行動が基本的にすべておかしい。それに対して常識人である菜美が鋭いツッコミを入れるというのが基本的な笑いを取るパターン。伝説のギャグマンガである「ボボボーボ・ボーボボ」のビュティを彼女のツッコミに垣間見た。

回を重ねるごとにキャラクターが増えていくのだが、嘘風の巻き込む力に菜美以外は屈服、彼に乗っかる形でボケをかましてくるので、それもまた面白い。

 ↑参考書籍。3話での人気投票ネタ、遊戯王武藤遊戯とのコラボレーションはもはや伝説。

 

この漫画の素晴らしいところは、菜美への共感にあると思う。ただのワンピースを知っているだけの一般人である菜美をツッコミとして立たせることで、「ワンピースが分からない人間にも面白い」をちゃんと意識できている。

 

パロディ漫画は難しいと思う。パロディ元の作品のネタがディープすぎると読者は離れてしまう。ONE PIECEは国民的な漫画ということで、漫画を読んでいる層ならばある程度内容を理解しているのは救いではあるが、それでも「どこまで掘り下げれば良いのか」という視点を失えば、途端に内輪ネタの寒い漫画となってしまう。

その点、「恋するワンピース」は深すぎるネタには「わからない」と菜美がツッコミを入れるもしくはスルーするし、ツッコミの内容も我々のような一般人が嘘風の奇行を目の当たりにしたときにするっと出てきそうな言葉だ。

彼女が我々読者に近い立場として作中でツッコミを担ってくれているお陰で、この漫画は「内輪感」を極力減らすことに成功していると思う。

 

かつて週刊少年ジャンプで連載されていた「太臓もて王サーガ」は見境なくパロディしていたが元のキャラクターに魅力がありネタにも勢いがあったのでわからないネタは読み飛ばせていたし、「トマトイプーのリコピン」は比較的広い層が知っているであろう時事ネタを扱い分からない状態をつくらないようにしていた(賞味期限が限られているのがもったいないけれど)。

 ↑伝説のパロディ漫画。パロディし過ぎてパロディ元の漫画のキャラクターが人気投票でそこそこ上位に食い込んでいた。

トマトイプーのリコピン 1 (ジャンプコミックス)
 

 ↑こんなかわいい顔したキャラクターが時事ネタを放り込んでくるという魅力。

 

パロディ漫画の手法も数多くあるけれど、「私たちと同じ視点のツッコミ」がいてくれることの安心感を「恋するワンピース」は教えてくれた。 

恋するワンピース 1 (ジャンプコミックス)

恋するワンピース 1 (ジャンプコミックス)

 

 1巻が発売されているので、ジャンプ+で読んで気に入った人はぜひ購入してみてほしい。