定時後に映画館

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【カメラを止めるな!】前情報一切なしで1回目を見た直後に、2回目の上映に駆け込みたい映画(感想:ネタバレあり)

kametome.net

 

話題になっているので、見てきました。話題になっているだけあって、とても面白かった。

TOHOシネマズ新宿で見てきたのですが、TCX(大きいスクリーン)でこれだけの回数上映されてるなんてとっても推されているじゃないか。

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↑2018年8月14日の公開。8時40分からの回を見てきたのだけれど、人でいっぱいだった。

 

これはこの映画が面白くなる最大の"ネタ"をバらさないと感想が書けないので、ネタバレしながら魅力を解説するぞ。細かい内容はそこまで解説しないけどな。

ちなみに、この映画は確実に前情報なしで見に行ったほうが楽しいので、これから見る人は絶対にこの記事を読まないでほしい。見た人だけが、スクロールを止めるな!

 

あらすじ(ここからネタバレ)

まずは公式のINTRODUCTIONから引用。

とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。​本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。
”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。 

そう。撮ったヤツらの話である。

 

この映画の最大の魅力は、まずいきなり37分のワンシーン・ワンカットゾンビ映画を見せられ、その後映画を撮った背景(映画を撮るまでの前段と、ワンカットムービーを撮影している裏で何が起きているのか)を描くという二段構成にある。

 

要は、いきなりB級感丸出しのゾンビ映画を見せられ、後半はそれをとった監督を中心とした、5割コメディに5割ちょっとだけ心温まるヒューマンドラマを混ぜたような映画になっているのだ。

 

唐突に始まるB級映画の隙が後半に繋がる

タイトルに書いてある通り、私は前情報一切なしで見に行った。

だが、何も知らなくても、「これはB級映画感がすごいけど、それにしてもおかしい」という明確な疑問点がいくつも浮かんでくる。

 

登場人物がカメラ目線で話しかける、登場人物が織りなす唐突な趣味の話、数々の役者の理解不可能な行動、謎のカメラワーク・・・。

その程度ではなく、37分の中に溢れんばかり意味不明が散りばめられている。意味不明が溢れて離散し、私の頭に様々な疑問がこびりつくのだ。

 

前半37分を見ているときは

「これはゾンビ映画をメタ(登場人物がとある作品に出演していると理解している)っぽく撮ることが魅力の映画なのだろうか。にしても滑ってるぞ。」

と思った。それだけ、酷い内容だったということだ。

 

しかし、その「明らかにおかしい」が後半に活きてくる。

明らかに普通じゃないゾンビ映画の37分の展開は、視聴者のツッコミと共に強く頭に残り続ける。

37分を終えた段階でピースが欠け過ぎたジグゾーパズルの一枚絵が目の前にあり、後半部分を見ていくうちに綺麗にピースがハマっていき、「そういうことか!」というある種の快感を視聴者にもたらす。

 

「あぁ、これはそういうことだったのね」を後半の物語の中に上手く仕込んでいるので、普通のコメディよりも爆発力があるし、登場人物の一つ一つの行動の背景を視聴者は食い気味に見る。

普通の映画とは違った没入感を、緻密な脚本が生み出しているのだ。

 

創作を完成させるという感動

本作は壮大な前フリ(作中の疑問点と、後半の撮影までのパート)からの撮影シーンのハプニングによる爆発力ある笑いだけでなく、一つの作品が完成される経過を共に体感できるプレミアムな作品である。

 

主人公は「安い早いそこそこのクオリティ」を自称するうだつの上がらない映像監督である。作品のクオリティにこだわりたいという思いがありながらも、スポンサーが第一でその思いさえ殺しながら撮影に臨む(映画監督志望の娘が良い作品を撮りたいという熱い思いを前面に押し出しているので、そのコントラストがとても良い)。

役者も問題だらけで統率しきれていない。そんな中ワンカット作品を撮り始めるが、現場に訪れた熱い思いをもった娘に影響されながら、彼は一本の作品をハプニングにもめげずより良い作品にしようと奮闘し、そして、我々が序盤の37分で見せられた作品がしっかりと完成する。

 

37分のB級ゾンビ映画は、後半の創作者たちのストーリーを経て、価値あるものに昇華されるのだ。出来上がった作品を知っているからこそ、後半のストーリーが映えるという捉え方もできる。相互に良い意味で補完し合っているのだ。

劇中カメラ目線で「カメラを止めるな!」と監督が熱い一言を発するが、前半37分を見ていた間は「なんだこれ」としか思えなかったのセリフに、それ相応の思いがあることを知る。

そういった関係者全員が血反吐を吐きながら(実際、血だらけになっていた)、協力しながら、一つの作品を撮るという熱い物語に仕上がっている。

 

ちなみに、ラストシーンの演出も憎い。

高い位置から撮影するためのクレーンが破損。番組提供側は生放送を止めないことを重要視しているが、監督としてはラストシーンを撮影することが作品にとって重要なので、何としても撮りたい。今まで自らの主張をしていなかった彼が、声を荒げるほどに。

一度は諦めかけるが、娘の提案で組体操のピラミッドで撮影することを決める。無事出演者やスタッフが組み立てたピラミッドの上から撮影は成功。

娘がピラミッド案を思いついたのは、監督が持ち歩いていた台本に、幼い娘との肩車の写真を貼っていたのを見たからだった。

それも撮影パートに入る前に、リハが上手くいかなくて泣きながら監督が昔の娘との写真を見て泣いているシーンがあり、しっかりと伏線を張っているのだ。

 

37分の作品で散りばめ抜いた伏線を回収しながらも、こんな仕掛けを用意しているなんて、もう頭が上がらん。

父親と娘ってのも、組体操ってのも、ズルいんだよね。組体操とかはさ、視覚的に一体感を生み出せるから最高の手法だと思うんだよ。「湯を沸かすほどの熱い愛」でもクライマックスで組体操使ってたけど、あれも感動しちゃうんだよね。組体操、ずるい。

 

おまけ:エンドロールも好き。

エンドロールで前半37分のメイキング映像が流れる。

実際はこうやって撮られたんだ、が分かって面白い。映画を撮る人の物語だったので、なおさらメイキング映像が面白い。

「最後まで席を立つな。この映画は二度はじまる。」がこの映画のコピーだけど、エンドロールはある意味「三度目のはじまり」だね。最後まで必見だよ。