定時後に映画館

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【ラ・ラ・ランド】エンディングのビタースイートこそがLA・LA・LAND(感想:ネタバレだらけ)

今更ながらLA・LA・LANDを見てきた。最高だった。
(「ラ・ラ・ランド」よりも「LA・LA・LAND」の表記がしっくりくるよね)

gaga.ne.jp

もう見ている人が多いと思うので、ネタバレ前提で感想を書いていきたい。

この映画はミュージカル映画なのだけれど、音楽が良かったのは当然として、僕が特に気に入ったのはそのストーリーだった。

予想を裏切るエンディング(ネタバレあり)

まずは、公式サイトの「STORY」を見てほしい。

引用させていただくと、こんな感じだ。

夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミアは女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末の店で、あるピアニストの演奏に魅せられる。彼の名はセブ(セバスチャン)、いつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏したいと願っていた。やがて二人は恋におち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが成功したことから、二人の心はすれ違いはじめる……。

 僕はあらすじを見てからこの映画を見たのだけれど、トレーラーの雰囲気から察するに、「ハッピーエンド」の作品だと予想していた。
 このあらすじから浮かんでくる最高のハッピーエンドといったら、「ミアもセブも夢を叶え、2人で幸せに暮らしました」だろう。

 現代のおとぎ話的ミュージカルを想像する。僕もそうだった。

 

 だが、実際は違った。100%間違えているわけではないが、50%は間違えている。

 最高のハッピーエンドではないが、絶妙にハッピーエンドなのだ。

 その甘美な夢の中にほろ苦さがある、ビタースイートな感じがたまらない。

 

 終盤までのあらすじを追うと以下のような感じだ。

 

 女優を目指すミア、自分のジャズバーを持つことを夢見るセブ
 出会いは最悪だが、映画館を見に行ったことをきっかけに恋に落ちる。
 セブは金のために自分の夢をゆがめた形で「ウケる」バンドに所属。彼は現実を生きようとし、ミアはそれでも夢を追う。

 そんな中、ある晩の喧嘩で2人は疎遠に。

 ミアも女優を目指して1人舞台に挑戦したが、(彼女の心象として)失敗。彼女も夢をあきらめてしまう。だが、その舞台を見ていたお偉いさんからセブのケータイに電話がかかってきて、彼女にチャンスが巡ってくる。
 夢を諦めかけていたミアを夢の舞台に引き戻したのは、セブだった。

 

 まぁ、ここまではわかる。夢を追うストーリーにおける王道の挫折と再生を描いているし、恋愛の王道における出会い、すれ違い、再生を描いている。

 

 だが、ここからが面白い。予想を裏切っていく。
 彼らはお互いの夢を追って一度別れることする。愛しているという言葉とともに。
 そして、5年後。ミアもセブも夢を叶えるが、ミアはすでに結婚をしていた。

 セブが自分で開いたバーにミアとその夫が訪れ、お互いが頷き合うシーンでエンド。

 なんだよ、2人は結ばれないのか!!!
 これはハッピーエンドなのか?
 文字面だけみたら、ハッピーエンドではなさそうだが、2人は間違いなく幸せそうなのだ。
 それが、この映画の魅力である。 

最高の「もしも」が手に入らない絶妙なビターさ。最高のエピローグ。

 ミアもセブも、すべてを手に入れようとしなかった。

 中途半端を良しとせず、夢を追うために愛する人と別れることを決めた。

 その結果、彼らは自分の夢を叶えた。

 しかし、5年後、お互いに夢を叶えた後、再会してしまったときに思うことは。

 自分の選択が間違えだとは思っていない。夢を叶えられた。愛する人も夢を叶えた。
 だけど、「もしも」こんな形で夢を叶えられたら。

 彼らはその最高の「もしも」を想像する。夢をお互いが叶え、それでいて2人が結婚していた未来を。

 このシーンがたまらない。これまでのストーリーにおいて、彼らが最良の判断をしたときの「もしも」を描いた7:40秒(サントラの「Epilogue」の再生時間が7:40だったから、たぶんそれぐらい尺があるのだと思う)をエピローグとして描き、最後にミアとセブが頷きあって、「LA・LA・LAND」はエンディングを迎えるのだ。

 このエピローグが秀逸。今までのシーンを別の角度からおさらいしながら、ミアとセブの出会いから別れまでを描き、かつ音楽は劇中曲のメドレーのようになっていて、グランドフィナーレにふさわしい。

このシーンのためだけに、もう一度見てもいいぐらい良かった。


『ラ・ラ・ランド』本予告

 予告編のピアノを弾いた直後のキスも、「最高のもしも」のシーンだ。予告編を見てから映画を見に来たので、最初セブが邪険にミアを押しのけて店から去っていったとき、びっくりした。

夢幻なミュージカルではなく、楽しい現実を見せてくれるミュージカル。

最高のハッピーエンドではないが、ほろ苦い余韻のあるハッピーエンド。我々が背伸びしてギリギリ届くような幸せが、しっかり描けていると思う。こんなの映画の中だけじゃん、とはならない。ある程度納得のいく形で、エンディングを迎えるのがLA・LA・LANDの良さだと思う。

特にセブがまだ(おそらく)独り身で、ミアはセブの前に交際していた金を持ってそうな男とよりを戻して結婚しているのが妙にリアルで泣きそうになった。

↑これDVD見直して気付いたけど、他の男だったね。適当なこと書いてすいません。でも、まぁ一切これまで出てこなかった男と結婚してた方がリアリティはあるよな。

 

ちなみに、サントラに付属されている冊子に書いてあったのだけれど、本作の監督デミアン・チャゼル氏は夢の実現のために一度離婚しているとのことだ。

同じく彼の作品である「セッション」はドラマーの話だが、デミアン・チャゼル氏はジャズ・ドラムに打ち込んでいた時期があったらしい。

どちらも名作だと思うが、彼の作品のリアリティは彼が歩んできた人生が投影されているものだと知ると、名作で然るべき名作という感じで面白い。作品の裏に人の歴史ありだね。

 

 

【SHIROBAKO】働く女の子シリーズにおける、高梨太郎と平岡大輔という男の価値(感想:ネタバレだらけ)

shirobako-anime.com

 

今更過ぎるが、SHIROBAKOというアニメを一気見した。

星野源オールナイトニッポンが好きで、毎週通勤時間を使ってradikoで聴いているのだけど、彼がSHIROBAKO大好きと話していたからだ。

www.allnightnippon.comhttp://www.allnightnippon.com/hoshinogen/

 

元々、「劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME」公式サイトを見ていて(なおTVアニメは見ないで劇場版だけ見るという暴挙を犯した。それでいて面白かったから、ビックリだ。)P.A.Worksのアニメーションつながり、かつ「働く女の子シリーズ第2弾」として、「SHIROBAKO」には興味があったので、ちょうどいいきっかけとなった。

 

友人からBDボックスを借り、一気見する。24話なので、土日を潰して2日間で見終えた。

 

面白かった!

 

主役の5人の女の子たちがそれぞれの夢に向かって、壁にぶつかりながらも、それを乗り越え、それぞれが小さな成功を掴み、5人が一つの作品に集う様は最高である。

23話、しずかが妹役の声優として抜擢され、それに涙をこらえらず泣いてしまうあおいが、最高のクライマックスだとおもう。激しくもらい泣きしてしまった。

 

まぁ、このアニメを見て感動し、仕事って良いなあなんて思ったり、そこは皆が同じように抱く感想だと思う。では、この記事で何を書きたいか。僕は考えた。

 

そして、圧倒的な存在感とウザさを兼ね持った、高梨太郎、そして平岡大輔という男に焦点を当てた。

shirobako-anime.com

 

放映からかなり時間が経って、既に語り尽くされているであろう作品であるからこそ、「働く女の子シリーズ」において決して主役を張ることはできない男性について語ってみたい。

 

「仕事ができない」困り者を担当する男たち。

SHIROBAKOは仕事を頑張る女の子たちを描いた作品である。彼女らを応援し、あるいは感情移入するためには、ある程度「仕事のリアル」が描けていないとならない。

アニメの制作現場のリアルは分からないが、僕も社会人である以上「会社で働く」ということのリアルは分かっているつもりだ。
SHIROBAKOは、いろんな人とチームになって一つのことを完成させる仕事の本質を描けている作品だと思う。アニメらしい脚色をされながらも、リアルを逸脱している作品ではない。

 

その「リアル」を描くのに、要素として必要なのが、「トラブル」だと思っている。

仕事の美しい部分だけではなく、起こり得るトラブルや壁をしっかりと描くことが、「あぁ、こういうことってあるよね。仕事っていいところだけじゃないよね」というリアルを、それらトラブルを試行錯誤の結果乗り越えて成功を掴むところを描くことが、「やっぱり仕事っていいよね」というフィクションならではの感動を、担保する。

 

だが、仕事におけるリアルな「トラブル」を描くのはなかなか難しいのではないだろうか。

僕も社会人として働いている身であるが、「許される失敗」と「許されない失敗」がある。そして大きなトラブルを生み出すのは、たいてい「許されない失敗」であり、残念ながらそれら失敗は「許されない」と言われるだけあり、第三者的に見ると明確に心象が悪い。

「働く女の子」シリーズであるSHIROBAKOにおいて、「働く女の子」の視聴者からの心象が悪くなるのは問題である。アニメーションだし「キャラ萌え」という重要な要素を排除するわけにはいかないし、致命的な失敗や「こんな働き方っていいんだっけ?」と視聴者に対して投げかける役割を女の子たちに担わせるわけにはいかないのだ。

 

そこで、登場するのが、「仕事ができない男たち」である。

ノリと勢いと調子の良さで乗り切ろうとし、最終的に宮森に尻拭いをさせる高梨太郎。

徹底的効率主義で、協調性がなく、クオリティを担保しようとしない平岡大輔。

メインキャラクターではないが、変な話、編集者茶沢信輔も仕事ができない男だ。

 

彼らが仕事の悪を演じ、それがチームに損害を及ぼし、その損害を主人公宮森が乗り越えていく形で、仕事の酸いと甘いをSHIROBAKOで描いているのだ。

そういう意味で、高梨太郎および平岡大輔は、とても重要な役回りを演じていると言える。放送当時のまとめサイトなどを見てみると、結構視聴者から彼らへのヘイトは高めなのだけれど、それは制作サイドの思惑通りなのではないだろうか。

リアルな、仕事できないっぷり

高梨太郎も、平岡大輔も、本当にこの世に存在しそうな「仕事ができない男」なのが面白い。茶沢さんについては、あまりに酷すぎて少々現実味にかけていたが、サブキャラクターなのでこれぐらいでいいのだろう。

 

高梨太郎はディレクションを行う立場の「制作進行」でありながらも、その役目を担えていない様が面白い。

例えば、5話から6話にかけて発生する遠藤と下柳のトラブルは、完全に彼の無能を露呈させている。

情報の横流しを考えずに行った結果、伝言ゲーム的情報の齟齬が発生し、問題発生。

更に問題が発生した後も、その問題を隠蔽して自らの力で解決を行おうとし、さらに事態を悪化させる始末。

自ら考えることを放棄する、炎上するまで問題を上長に報告しない。高梨君も新人という設定だったが、新人がよくやりそうなミスを綺麗に体現している。

 

平岡大輔は協調性が欠如しているが、ある程度仕事ができる社員だ。高梨太郎とは別のアプローチで「仕事ができない」。高梨太郎の「人は良いけど、徹底的に適当」という仕事のできなさがマンネリと化していたところで、彼を登板させる良采配。

彼は自らが中途半端につけてきた経験をもとに判断し、社内のルールや適切な仕事の進め方を 切り捨て、周りに迷惑をかけるタイプだ。

朝礼に出ない。効率極振りの仕事の仕方で、アニメーターに迷惑をかける。態度が悪く、周りの人と喧嘩しちゃう。

この手の非協力な人間性は、職場にボディーブローのようにじわじわとダメージを与えていく。さらにその人間性が社外に及んでしまうと、「仕事を受けたくない」という事態にもなりえるのだ。

 

彼らのような「仕事ができない」人間たちは、本当にそこら中にいる。うじゃうじゃいる。仕事をする以上、彼らとの付き合い方、彼らをいかにコントロールするかを学ぶのは必要不可欠だ。

 

そして、SHIROBAKOにおいて、見事ダメな男たちを手なずけ、仕事を円滑に進める役目を果たしたのが、我らが宮森である。

そして、彼女はより有能な制作進行として、魅力的な「働く女の子」としてさらに輝くのだ。高梨と平岡を踏み台に。

宮森、すげー!宮森、やったぜ!と我々視聴者は思う。

あぁ、不憫な男たち。でも、君たちは重要な役割を担っているんだぜ?

 

それでも、「できない男」は活躍する。

SHIROBAKOの良いところは、「できない男」がしっかりと活躍の爪痕を残すところだ。

高梨は安藤つばさ、佐藤沙羅ら後輩社員が入社してからは一番近い先輩として彼らを教育する立場に一応身を置いているし、矢野エリカが帰省するとなったときには文句も言わず栃木まで車を走らせる。社交性が全くなかった平岡の心を多少なりとも開かせたのも、彼だろう。

愉快で向こう見ずな人間性が、職場において実は良い方向に作用している。

 

平岡は?というと最後まで挽回の機会はあまりなかったように思える(アニメのクオリティと制作スピードを天秤にかけて迷っている宮森というシーンがあったが、このアニメでは基本的に「良い物をつくる」に軸足をおいているので、効率的な行動が評価される場面は少ない)。

だが、彼が専門学校時代にアニメに対して熱い思いを持っていたことは第三者の口から述べられているし、原作レイプしたアニメを語る際に悲痛な表情を浮かべるなど、彼がアニメを好きだということは作中でしっかりと触れられていた。

ほんのちょっとのシーンだが、最終話付近で光の速さで単純作業をこなす彼が描写もされていた。彼の効率が大好きな様が活躍していることを、しっかりと視聴者には提示しているのだ。

 

あくまでも「働く女の子シリーズ」。それでも男たちは活躍する。「働く女の子」を持ち上げるという意味で、そして、「働く男」として。これも、SHIROBAKOの良さの一つだと思う。

余談

SHIROBAKO、会社が舞台なこともあり、「飲み」のシーンが数多く存在する。結構僕は、「飲み」のシーンが好きだ。

大人の女性同士のサシ飲みはしっぽりとおでん屋台で、ダメ男たちの飲み会は泥酔するまでチェーン店で。

若手5人の女子会は写真とか撮っちゃって可愛らしく、おっさんが独りで酒を飲んでいるのは哀愁が漂っていてかつ翌日記憶をなくしている。

ここでも男女の格差が大きく出ていると思うのだけれど、男性の立場からすると、ことごとく男性の飲み会の描写は的を射ている気がする。

女子だけの飲み会はあんなに美しいのか。本当にあんななのか。フィクションと現実の差が、わからない、わからない・・・。

 

ということで、SHIROBAKOについては以上。また働く女の子シリーズを作ってほしいなあ。

 

ブリリアショートショートシアターは優秀なデートスポット。

なーにがデートスポットだ。お前はいつも独りで映画館に行っているだろう?と自嘲気味でキーボードを叩いているが、本当のことなのだから仕方があるまい。

 

ブリリアショートショートシアターという映画館がある。簡単に言ってしまえば、ショートフィルムを公開している常設映画館だ。「みなとみらい駅」から徒歩6分で着く。

ここが、とてもデートスポットとして優秀だったので、ブログに書くことにした。

 

僕が誰と行ったのか、そもそも独りだったのではないか、さらに言えば僕という人間が語る優秀なデートスポットに価値があるのか、などなど説明しなければいけない前提が数多く存在するが、割愛。

「ブリリアショートショートシアター」がなぜデートスポットとして最適なのかを順を追って説明していきたい。

映画館は気楽にデートができるコンテンツ

映画館は優秀である。

コミュ障であろうと、相手との距離感をつかむのが難しかろうと、2人で映画館に入り、作品が上映されてしまえば基本的には向き合う相手は作品だけだ。喋らずとも、駆け引きをせずとも、2人で時間を過ごすことが出来る。

「いや、話さないと意味がないじゃないか。距離が縮まないじゃないか。」という「映画館デートスポットとして無能論」も存在するが、そんな上級者向けの話をしているわけではないし、僕ができるわけがない。

飲みに行くだけでは物足りない。昼間から気になる人と会う「デート」的なものを楽しみたいが、どこに誘えばいいかわからない。デートをしたいとは言ったものの、素面で2人で長い時間を過ごすのは少々ハードルが高い。

そういう心の童貞たちへの救いのデートコンテンツこそが、映画館だと僕は言っているのだ。

映画を見てるだけで2人で過ごせる。さらに、映画を見終えた後には、2人の共通の話題が生まれるため、会話も弾みやすい。

デートスポットとして優秀な理由は、その気軽さと映画を見終えた後に会話が弾むという点にある。まず、ここを押さえていただきたい。

だが、時に映画は失敗する。

カップルの最大の敵は「リアクションがとりにくい映画」だと僕は思っている。

映画館デートのリスクは、作品の出来で、デートの明暗が別れてしまうということだ。

下手にエロかったり、グロかったり、叩いて盛り上がれないほどつまらなかったり……そういう作品を引き当ててしまうと、誘った側の男性としては「やってしまった」という罪悪感とともにおそらく映画館の後に行く予定だった食事なりカフェなりを過ごさなければいけなくなるし、女性側としては「うっわ、マジセンスねーの選んできたw」とその時点で男を切り捨てるだろう。

インターネットで情報が溢れかえっている今、こういった失敗をするリスクは小さくなってはいるが、それでも人の映画への好みはわからない。

僕はある程度映画の本数を見ているので、相手が好きな作品を何個かあげてくれれば、上映中の映画の中からそれっぽいものを選ぶことはできるわけだが、そんなスキルを持ち合わせた人間などそうそういないし。

そもそも、そんなめんどくさい工程を踏んで映画に誘う男など気持ち悪いことこの上ないので、作品を何個かあげて、女性が見たいか見たくないかを訊いて、それで見る映画を判断するのが普通だ。

しかし、女性が見たいといった映画でも、それが当たりであるとは限らないのが難しいところ。そして、本人が見たいと言った映画であるのにも関わらず、つまらなかった時のダメージは男側が背負うことになる(メンタルが強い人なら大丈夫なのかもしれないが、そういう人向けに書いている文章ではない)。

 

私事だが、過去に「ケープタウン」という映画を女性と2人で見に行って、陰鬱な雰囲気で映画館を後にするという最悪の経験をしたことがある。こういう悲劇が生まれる可能性があるのが、映画館デートなのだ。

capetown-movie.com

 

閑話休題。ここまでで僕が言いたいことをまとめておこう。

映画館デートは誘いにくい。だが、失敗するリスクは避けられない。

 

そして、作品を言い訳にできないどうしようもない問題もある。じっと座り作品に集中して2時間を過ごすのは結構疲れるのだ。相手方の女性がそれに耐えられる人かどうかも考えなきゃいけない。

(終わったら女性側が疲弊していたら、男性としてはちょっと申し訳ない気分になるでしょう?)

 

 つまりは、安易だと思われている映画デートも、しっかりと対策を練らなければ結構失敗してしまう可能性は潜んでいるのだ、ということが言いたい。

 

そこでショートフィルムである。

ショートフィルムとは何か。せっかくブリリアショートショートシアターのサイトで説明してくれているので、引用させてもらう。

長くて30分、短いものはわずか1分という「ショートフィルム」。日本では「短編映画」と訳されるが、映像文化の先進国アメリカや、ショートフィルムの歴史の長いヨーロッパでは、通常の映画とは区別され、映像表現のジャンルとして確立しています。

 

簡単に言うと、短い映画だ。

察しの良い皆さんならもうすでにお分かりだと思うが、この時点で「映画デートのリスク」を一つ回避できている。

長くて退屈な映画ほど疲れるものはない。長くても30分程度の映画ならば、仮に相当つまらないとしても、精神を摩耗することはないだろう。

 

しかし、我々デート初心者の不安は尽きない。

「短かろうがつまらなかったら、この後のデートお葬式みたいになるよね?」

思うだろう? だが大丈夫だ。これを見てほしい。

 

THEATER PROGRAM [Brillia SHORTSHORTS THEATER]

 

こちらは「ブリリアショートショートシアター」のプログラムである。もちろん上映作品は期間によって変わるが、ポイントは「ほぼすべてのプログラムにおいて、複数作品が上映されていること」である。

 

つまり、1枠のチケットを購入したら、3~4本の映画を見ることが出来るのだ。究極のリスクヘッジ。上映される4本ともつまらない映画なことなど、滅多にない。

それに、複数本上映されるメリットは他にもある。男性的には上映後にいかに会話を盛り上げるか、会話のきっかけを作るかが重要かと思うが、上映作品が複数あると会話の引き出しが多くなってとてもやりやすい。

 

「どれが一番好きだった?」の魔法の一言で会話が始まり、そのあとも作品同士を比較することで、かなり映画の感想が語りやすくなる。

普通の映画を見に行った時には、「比較」という手が使いにくい。比較対象として語りたい作品(同じようなジャンルとか、テーマとか、監督とか、スタッフとか)を相手が見ているとは限らないからだ。

しかし2人で複数本を見ているならば話は別で、一緒に見た3~4本という同じバックグラウンドで、語ることが出来るのだ。

 

仮に全部の作品がつまらないという究極のはずれを引いてしまった場合でも、それぞれの作品に特徴の違いがあれば、「どれが一番好き(マシ)だった?」という会話を生むことが出来る。趣味趣向を探るきっかけを作ることは可能なのだ。失敗したときの取り返しがつきやすいというのも魅力である。

 

なお、3本も4本も上映されたら、ショートフィルムの(デートにおける)良さである「短くて疲れないこと」が損なわれるのではないか?と心配する人もいるかもしれない。

大丈夫だ、ブリリアショートショートシアターでは、1プログラム60分と決められている。60分ならば、大抵の劇場作品より短いし、TVドラマと同じ尺ぐらいなので、さすがに耐えられない人は少ないだろう。

ブリリアショートショートシアターデートに、隙はない。

行ってみよう

映画館デートは気軽であるが、リスクがある。しかし、ブリリアショートショートシアターデートにおいては、そのリスクの一切は排除される。

じゃあ、いかない理由はないだろう? ということで、次は行き方である。

 

なお、最後にダメ押しで一つ。「ブリリアショートショートシアター」は立地もとても良い。

ACCESS [Brillia SHORTSHORTS THEATER]

新高島駅か、みなとみらい駅から徒歩5分程度。

横浜エリアの精錬された美しさはデートにはぴったりだ。汚い部分が一切ないようにさえ思える。それに、娯楽は尽きない、何でもあるのだ。海辺、観覧車、ちょっと歩けば中華街。夏にはピカチュウ

そもそもデートスポットとして優秀な横浜エリアに、ちょっとした時間で見れる映画館。鬼に金棒である。

 

さて、閑話休題。僕はみなとみらい駅ではなく、新高島駅から行った。

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4番出口から出ると、こんな感じ。ちなみに休日だったが、だいぶ空いていた。

 

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ひたすら真直ぐ歩く。夜は少々怖いかも。

 

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歩道橋で道路の向こう側へ。この公園のような場所を超え、写真にある大きな建物2つの間の道をまっすぐ行く。

 

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ついた。映画館感はなく、普通のマンションの一角にありそうな雰囲気。

 

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入口もこじんまり。

 

こんな感じである。

※中に入ってからは人が多くて写真を撮る勇気がなかった。残念。

 

ちなみに、この映画館は窓口でしかチケットを買えない。しかし土曜日に行ったときでも、席には余裕があったので、あまり心配することなく当日足を運べばよいと思う。

いざとなったら、劇場にカフェもあるので、そこで1時間ぐらい時間をつぶそう。

今回のオチ

RENTAL(レンタル) | SERVICE [Brillia SHORTSHORTS THEATER]

映画館を貸し切ってのプロポーズまでできる、ブリリアショートショートシアター。

恋する全ての男性の味方であることは言うまでもない。ぜひ、女の子を連れて行ってみよう。

※ブログ用に写真撮っている時点で、私がどのようなシチュエーションでこの映画館を訪れたかは察してほしい。何も言うな。

 

 

【追い詰められた人向け】ITパスポート試験に1日の勉強で合格する方法

【ITパスポート試験】情報処理推進機構という試験がある。

この記事は、試験日の前日まで努力を怠ってきた人間が、合格するためにどうやって足掻くべきかを説明したものだ。真面目な人、受ける気がない人は、「戻る」ボタンを押してくださって構わない。

ただ、ITパスポートに限らず、どんなペーパーテストでも最低限の努力で通過する方法はほぼ共通している。勉強が嫌いだが、効率的にいい点数を取りたい人も読んだらちょっとした参考にはなるかもしれない。

 

一応ITパスポートが何たるものかを簡単に記載しておこう(流石に前日まで勉強してなかった人でも、試験の概要は知っているはずだが)。公式HPから転載する。

iパスは、ITを利活用するすべての社会人・学生が備えておくべき
ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験です。

 とのことだ。

IT系の知識持ってるぜー!!!と自慢するための試験ということだね。

ちなみに世間に疎い私でさえも、「ITパスポートは簡単」との噂を幾度となく聴いたことがあるので、自慢にはならない可能性が大いにある。が、ITの知識持ってるぜー!!!と証明することは出来そうだ。

 

取得しようと決めたものの、怠惰な性格のせいで(あるいはおかげで)、試験日の前日をほぼノー勉※の状態で迎えた。結局勉強を始めたのは、1日前というオチ。

 

※ほぼノー勉という表現が正しいかどうかわからないが、通勤時間を使って教科書を1冊流し読みはした。「ほぼノー勉」という表現を取ったのは、試験日前日になって内容を確認したところ、一切記憶に残っていなかったので、「あの通読は勉強ではなかったのだろう」と判断したためだ。

 

で、当日試験を受けに行ったのだけれど、結果は合格。

 

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ギリギリを攻めたが、合格は合格。前日勉強でもどうにかなることを証明してみせた。

 

というわけで、私同様追い詰められた皆様に、ぎりぎり合格を手に入れる方法を伝授させていただきたい。一緒に楽して合格しような!

※この試験を私が受験をしたのは平成28年のことです。残念ながら年度ごとに試験内容が更新されていたとしても、こちらの記事はその内容に即した更新をしているわけでもないので、気休め程度に読んでください。

Step0 試験を申し込む 

 前日段階で試験申し込んでなかったらびっくりだが、ITパスポート試験はしょっちゅうやっている。僕も詳しいことはよく知らないが、しょっちゅうやっている。だから、大丈夫だ。明日受けられるかもしれないぞ。

【ITパスポート試験】受験申込手順

 詳しくはここを見てくれ。

Step1 試験の仕組みを知る 目標10分

まず、試験の内容や合格の基準をしっかりと調べよう。合格するための最短距離を分析するのことが、怠惰を極める秘訣となる。

ご丁寧に、公式HPにも記載されている。

【ITパスポート試験】試験内容・出題範囲

 

簡単に説明すると、

◇ITパスポートは3分野から出題される。計100問、うち8問は採点されない。

◇全体で6割以上の点数を取れば、合格。

◇各分野で3割以上の点数を取らなければ、不合格。

といった内容の試験だ。

ちなみに、3分野中「テクノロジ系(IT技術)」と呼ばれる分野が45問と最も多く、「マネジメント系(IT管理)」と呼ばれる分野が20問と最も少ない。

 

これらの情報から、導かれる楽するための合格戦略は以下の通りだと思われる。

◇出題数が多いテクノロジ系を中心にインプットする。

◇出題数が少ないマネジメント系は最低限の勉強に留める。

 

とりあえず、私はテクノロジ系ばかり攻めて、マネジメント系とストラテジー系は適当に流すことをまずは決めた。

※テクノロジ系が結局のところ最も点数が低かったので、勉強しなかったらおそらく試験に合格していなかっただろう。

Step2 教科書を読む×2回 目標3時間

とりあえず方針を決めたら、教科書を読んで、どんな問題が出題されるのかを把握しよう。2回と書いたのは、私が2回読んだからだ。後述するが、Step 5でもう一度教科書は読むので、計3回通読したことになる。

 

私が選んだ教科書はこちら。

 猫のイラストが可愛く、項目が「時々出る」「必須」「超重要」と出題頻度ごとにわけられているので、効率的に勉強するのに役立つ。

猫のイラストは関係ねえだろって思った人。勉強するうえで最も大切なのはモチベーションだということは、この記事を読んでいる君自身が分かっているはずだ。私はどうにか猫ちゃんによって、崩れ落ちそうなか細いモチベーションを奮い立たせたのだ。

 

2回読むと言ったが、前日から勉強を始めた我々には時間がない。普通の読み方などもちろんしない。読み方は以下の通り。

 

【1回目】 目標30分

流し読み。ぺらぺらーっと、見開き1ページあたり5~10秒ずつ。ページは一切飛ばさず、赤字や重要そうな用語だけ頭にひっかけるように読む。例題みたいのが各パートの最後に載っているが、それは無視。

 

【2回目】 目標2時間30分

必須・超重要という項目だけ読む。一般に「読書」と言われている、ちゃんと内容が頭に入るレベルのスピードで読む。

分厚い教科書ちゃんと読むなんて無理じゃない?と思う人もいるかもしれないが、実は1度流し読みをしているので、あまり時間はかからないはずだ。実際に試してみてほしい。

 

この工程については、私は普段から本を読んでいるので、計1時間半ぐらいで済んだ。

 

Step3 自分の得意・苦手を把握する 目標5分

教科書を2回読み終えれば、大体自分の得意分野と苦手分野がわかるはずだ。

それを把握してから、Step4に行ってもらう。この後の勉強の効率が全く違ってくるわけだ。

 

私の場合は、経営学部で4年間遊びほうけていた学業に励んでいたこともあり、ストラテジ系は頭に入っていた。

しかしテクノロジ系はてんでダメ。マネジメント系はまあ、そこそこわかりそうだ。

 

これぐらい把握しておけば問題ない。全部苦手なら、全部苦手で諦めて次にいこう。

Step4 過去問をひたすら解く 目標:かけられる時間をひたすらつぎ込む

ここが最大のポイント。過去問を制するものが、本番を制す。

同じ問題が出るわけではないが、問題の傾向はわかるし、インプットした知識を問題を解くという行為によってアウトプットすることで、知識はさらに定着する。

過去問を解く→間違える→覚える

のサイクルを何回も何回も繰り返すのだ。

 

過去問はこのサイトで解いた。

ITパスポート過去問道場|ITパスポート試験.com

 

このサイト、「分野を指定して出題」という優秀な機能が付いており、自分が苦手な部分だけを重点的に学習することが出来る。

ここで、Step3の自分の得意・苦手を把握していることが活きてくる。

我々には時間がない。なので、苦手な分野だけ選択しひたすら解くのだ。得意な分野については、もはや自分の感覚を信じる。

 

しかし、「まんべんなく苦手!」とか「どこが苦手かもわからない!」という人もいるだろう。そういう人は、以下の手順でやってみてほしい。

 

◇まんべんなく苦手

点数配分が多いテクノロジ系を重点的に攻め、その後マネジメント・ストラテジ系を軽く解く。

3割取れないレベルで苦手な部分をつぶすこと、そしてテクノロジ系でひたすら点数を稼ぐことが重要。

 

◇どこが苦手かわからない!

模擬試験形式で出題→半分の問題形式で実施→どの分野が苦手か判別→苦手分野に絞って出題。

 

ちなみに、僕はストラテジ系は一切やらずに、テクノロジ系とマネジメント系だけで出題を繰り返し、最終的にはテクノロジ系だけで過去問を解いていた。

なお、時間がなかったので、模擬試験はやっていない。


ジャルジャルコント『びっくりした話』

夜ご飯を食べた後、急にジャルジャルが見たくなって、そのせいで勉強時間が4時間ほど減った。

 

Step5 最後に不安な用語を頭に詰め込むべく、教科書を通読 目標30分

過去問を繰り返し解くことで、ある程度の知識は頭に入っているとは思うが、ITパスポートのいやらしいところは同じようなアルファベット3文字の言葉が量産されていることだ。

相当頭がよくない限り、全部の用語を1日で覚えきるのは不可能だろう。

 

というわけで、最後の仕上げとして、自分が確実に覚えてられないような用語を頭にぶち込むために教科書を読み直す。

この際、試験前にちょっと確認できるように、付箋等でマークしておくと安心だ。

Step6 ちゃんと寝る 目標8時間

試験に寝不足で臨むなど言語道断。しっかりと寝よう。徹夜して暗記しようとするよりも、適切な睡眠時間を確保して臨んだ方が点数は良くなると思う。試験時の頭の働きが全然違うからね。

Step7 試験を受け、合格する 目標2時間

あとは試験を受けるだけだ。

【ITパスポート試験】試験の流れ

まあこんな感じなので、頑張って2時間で問題を解いてほしい。

Step5でマークした部分を試験直前に頭に入れておいて、試験が始まった瞬間に紙に書き下すというせこい戦略で確実に点数を伸ばしていこう。

なお 、ITパスポートはパソコンと1人で向き合って行う試験であり、終わった瞬間に点数が叩き出されるなんとも試験感がない試験なので、決して緊張しないでよい。適当な気分で受けよう。

そしておそらく、制限時間の2時間を丸々費やすほどの試験ではない。焦らず問題を解いていこう。

まとめ

以上がITパスポートを1日で合格する方法である。

だが、僕はこの方法で誰かが試験に合格することを決して望まない。

 

なぜなら、普通にコツコツ勉強すれば、危ない橋を渡ることなく余裕でパスできるのだから。ちゃんと勉強しろ、みんな。

 

ちなみに

まあわかりやすく傾向と対策を説明しているサイトってあるよね、ってことでこの記事を全否定するリンクを張り付けて今回のオチとします。

www.itpassportsiken.com

 

 さらに勉強したい人は情報セキュリティマネジメント試験対策のほうもどうぞ。

(なぜ合格できたのか私もよくわかっていないので、解説が非常にざっくりしているのが残念)

midoumairu.hatenablog.com

 

 

【愚行録】「仕掛けられた3度の衝撃」はどこだったのか。(感想:ネタバレだらけ)

愚行録を見てきた。

gukoroku.jp

 

内容がえげつないので決してデートムービーとしては向いてないが、終わった後の議論が盛り上がることこの上なしな映画なので、ぜひとも友達と一緒に行ってほしい作品。

 

「人と共有したくなる系胸糞悪い映画」としての魅力を語っていくぞ。

「本当にこんな人いたら嫌だ」だらけで胸糞悪い(ちょいネタバレ)

まずは、公式HPのストーリーを転載しておきます。

エリートサラリーマンの夫、美人で完璧な妻、そして可愛い一人娘の田向たこう一家。絵に描いたように幸せな家族を襲った一家惨殺事件は迷宮入りしたまま一年が過ぎた。週刊誌の記者である田中
(妻夫木 聡)は、改めて事件の真相に迫ろうと取材を開始する。

殺害された夫・田向たこう浩樹 (小出恵介) の会社同僚の渡辺正人
(眞島秀和) 。 妻・友希恵 (松本若菜) の大学同期であった宮村淳子 (臼田あさ美) 。 その淳子の恋人であった尾形孝之 (中村倫也) 。
そして、大学時代の浩樹と付き合っていた稲村恵美 (市川由衣) 。

ところが、関係者たちの証言から浮かび上がってきたのは、
理想的と思われた夫婦の見た目からはかけ離れた実像、そして、
証言者たち自らの思いもよらない姿であった。
その一方で、田中も問題を抱えている。
妹の光子 (満島ひかり) が育児放棄の疑いで逮捕されていたのだ――。

 

「関係者の証言」のつなぎ合わせの前半、そして事件の真相を田中兄妹の視点で明らかにする後半という構成。キャッチコピーの「仕掛けられた3度の衝撃」は後半部分にぎゅっと詰め込まれている。

 

「愚行録」の魅力は

①関係者の証言で描かれる人間が「本当にいそう」でとても気持ち悪い。

②これら関係者の証言がつなぎ合わされた結果、事件の真相が明らかになる精緻なパズルが完成されていく感覚

だと思う。

どちらかというと、僕は①の部分が気に入っていて、「良い人々」とされていた田向浩樹と田向友希恵が、汚い部分を人間関係の中で露呈していく様がとても面白いし、徹底的に胸糞悪い。大学や会社を舞台に、彼らが人間関係でマウントを取るために人間を利用していく様が清々しいぐらいだ。

また、田向夫婦だけではなく、彼らを語る登場人物もどこか屑めいていて、人間として壊れているのが良い。彼らの多くは田向浩樹と田向友希恵に利用された「被害者」なのだけれど、「被害者」という可哀想な立場に甘んじられない程度には人間的に問題を抱えている。

ここのバランスがとてもよくて、登場人物が皆屑であってくれるがゆえに、「あの人がかわいそう」的な気持ちを持たずに、誰にも感情移入することなく、フラットな視点で人間の悪意ある汚い活動を観察できる。「胸糞悪い」が、見ている側は心を傷つけられない。

 

こんな人間にはなりたくないという反面教師的ムービーにもなりえるし、こんな人間がこの世の中に少なからずいるという絶望を知れる映画でもあるのだ。

断片的な人の証言が繋がったときの快感(以下ネタバレ)

魅力の②に書いたが、いろんな人の証言が、あるタイミングで、事件の終息に向かい一気に収束していく。

それが、田中妹が田向友希恵と関わっていたという事実であり、そこから田中兄妹は事件の傍観者から関係者に立場を急激に変える。

ここからが「仕掛けられた3度の衝撃」の見せ場であり、ミステリらしい展開の連続だ。

前半の人間の悪意を丁寧に描いたパートから、謎の収束を一気に行う後半への移行。一つの映画で2度楽しい、的な魅せ方がたまらない。長めの映画だけど、最後まで飽きないで見れる仕組み作りが出来ているなあと。

「仕掛けられた3度の衝撃」とは?(完璧にネタバレ)

映画を見終わった後、「3度の衝撃」ってどこだったんだろう?と首を捻った。

なんというか、衝撃と言えるタイミングはかなり多く、3度に絞るとすればどこなのか明確に答えが出ないのだ。

 

僕は、以下3つが公式の指す「衝撃」だと思う。

1度目 田中兄が宮村淳子を殺害

2度目 田向夫婦を殺したのは、田中妹

3度目 田中妹の父親は、田中兄

 

前述したけど、田中兄妹は基本的に事件の蚊帳の外だと思っていたから、急に巻き込まれていき、一番人間として狂っているのが兄妹だったという展開には衝撃を受けた。

1度目の衝撃は、田中妹が田向友希恵と関わりがあったことかな、とも思ったけど、主人公が人平気で殺しちゃってる方が明らかに異常なので、おそらく公式的には「宮村殺害」かなあと。

 

こういう考察ができるって楽しみを与えてくれるキャッチコピー素敵だと思う。

その他、いろいろ謎が深い。

かなり解釈が難しい映画で、ここはどうだったんだろう?というのを整理するのが楽しい映画だった。

僕が感じた疑問は

①そもそも田中兄は、田中妹が田向夫婦を殺害したことを知っていたのか。

→知っていないとしたら、1年前の事件を追う理由がよくわからない。

→知っているとしても、なぜ追うのかわからない。

 (妹逮捕がきっかけで、警察にばれていないか不安になったから?田中兄が書いた記事は、犯人像を妹とは全く違う人間としていた可能性が高い、宮村殺害も「田中妹が疑われたから」という動機付けができる、など、「知っていた」説の方が説明が付きやすいかも)

②稲村の息子は?

「似てきたでしょ?」の言葉を深読みすると、「父親に似てきたでしょ?」という意味にも捉えられる。あのセリフの後の変な間はなんだったんだろう?

田向浩樹と別れた後も交際してて、父親は彼だったとしたら、田向の軽薄さに磨きがかかって面白い。

③田中妹が母になったタイミング

時系列の整理が必要なのだけど、

1年前 : 田中妹、田向一家殺害

半年前 : 田中妹と兄が一度会っている。それ以来会っていない。

現在 : 田中妹に兄が面会するシーンから、物語スタート

 

田中兄妹間の子どもの年齢はよく覚えてないが、0歳~1歳だとしても、兄と妹が行為に及んだのは最低でも1年以上前。田向一家を殺した頃には、命を宿していた可能性が高い。

いつからそのような関係になっていたのか。半年前に兄と妹が会ったときには、何があったのか。田中妹の精神状態はどうなっていたのか。

物語の中心に食い込んできたタイミングがちょっと遅かったので、田中兄妹の深堀があまりできていなかったのが、少々残念ではある。

では本を読もう

人間をとてもよく描けていたし、ミステリとしても完成度が高い。謎も多く話が弾む。最高の映画だったと思った。

しかし、補足したい情報が多すぎる。

どうやら原作があるようなので、こっちも合わせて読んでみようと思った。

 

 

【マリアンヌ】ブラッドピットと一緒に愛を疑おう!(感想:後半ネタバレあり)

久々の更新になってしまった。

 

マリアンヌを見てきた。

marianne-movie.jp

 


『マリアンヌ』特報30秒

 

恋愛映画ってどこか結末が見え透いていて、「まあこういう感じだよね」という予定調和を楽しむところがあるけれど、マリアンヌは性質がちょっと違う。

 

その愛が本物か、偽りか。最後までブラピと一緒に妻を疑える究極の2時間を楽しめる映画だった。

公式サイトを見てはいけない。

その愛が本物か、偽りか。妻役を演じるマリオン・コティヤールに、最後まで視聴者が疑惑の目を向け続けられる物語の構成が、この映画の大きな魅力でもある。

 

だが!!!公式サイトのSTORYを見たら!!!結末が容易に想像できてしまう内容だった!!!

 

だから、これから「マリアンヌ」を見たい人は、公式サイトの下調べをしないほうが良い。楽しみが半減すると思う。

 

でも、やっぱりどんな内容だかは把握しておきたいよね、という方にちょうどいい記事がございました。

ciatr.jp

 

引用させていただきますと、この映画は

実話を元に、1942年の第二次世界大戦中にモロッコで出会った男女のスパイの物語を、ロマンスとスリラーを織り交ぜて描いている本作。

とのことです。

配給側としては、ロマンスを前面に押し出したプロモーションをしているってことでしょうね。スリラーとして楽しませたいならば、結末が想像できるSTORYにはしないでしょう?

 

最後までブラピを疑心暗鬼にさせるマリアンヌ(ここからややネタバレ)

マリオン・コティヤールの演技がこの映画を成り立たせている。

 

ストーリーを補足して説明しておこう。

スパイとして出会ったマックス(ブラピ)とマリアンヌ(マリオン・コティヤール)は、作戦を成功させて結婚。その後幸せな日々を過ごすが、ある日マリアンヌがドイツのスパイ(大戦中だから敵国だね)だと疑いの目を向けられてしまう。マックスは彼女が白か黒かを判断するための作戦を命じられ・・・というお話。

 

物語はざっくり3部構成となっている。「マックスとマリアンヌが結婚するまでの出会いを描いたパート」と「結婚してからマックスがマリアンヌの疑惑を晴らそうと奮闘するパート」と「マリアンヌが白か黒か判明した後のパート」だ。

 

結婚するまでは、マリアンヌは完全に女の顔をしている。スパイあるある。妖艶な印象で男を惹きつける女。

 

マックスがマリアンヌの疑いを晴らそうとするパートでは、完璧な「良き妻」だ。マックスに完全に心を開いていて、娘を大切にしている、幸せな家庭を築いた妻であり、母。

 

そして白黒が判明した後は、裏に何かしらの思いを秘めた疑惑の女となり、我々視聴者を最後まで疑心暗鬼にさせる。

 

よくまあ、こんなに演じ分けられるな、と。マリオン・コティヤール、スゲーなあと。元々顔つきが影のある感じだから、妖艶なスパイ役だったり、何かを企んでそうな深刻な表情だったり、そういう演技がとても映える。しかし物語中盤では完璧にチャーミングな妻であり、母なのだ。

彼女の完ぺきな演技が、中盤からラストシーンまでの、我々およびブラピの疑いを膨れあげさせている。あっぱれ。

 

マリアンヌの白黒がはっきりした後が、熱い。(完全にネタバレ)

ここから完全なネタバレ。

 

マリアンヌは、スパイでした。娘と夫を人質にされて、通信を盗聴し、ドイツに流していたとのこと。

で、ここからがすごい。妻を愛した夫のマックスは2人での逃亡を図るが、最後まで「本当に脅されてスパイ行為をしていたのか」を疑わせるような演出がたくさんある。

 

拳銃をしまっている場所に視線を向かわせたり(つまりはカメラが、なんだけど)。

マックスがいない間に車から逃げていきそうなそぶりを見せたり。

娘を置いていくようなそぶりを見せたり。

 

これらの細かい演出のおかげで、まったく最後まで「マリアンヌは、マックスを愛した妻なのか」がわからないのだ。そして、散々疑心暗鬼にさせた後に、自害することで夫と娘の立場を守るという行動に出る。

だからこそ、涙するのだ。疑われていようと、最後には家族を守ろうとした彼女の愛に。溜めがあるからこその、涙。

本物の愛を描くために、彼女が「偽りの存在」だと思われているという事実はどうしても必要で、それを最後まで執拗に描き切った執念が素晴らしかった。

もう一度言う、公式サイトを見てはいけない。

既に映画を視聴済みの皆さんは、公式サイトを見ていただきたい。

marianne-movie.jp

 

以下STORYから引用。

全てが明かされた先にある、涙の物語。 

結末判明してるじゃないか!!!

涙の物語ってさぁ、もう日本の映画市場において感動を指す言葉でしかないわけよ!「妻に裏切られて辛いっすわー」って涙の物語はありえないんだよね。

この一言で、結末が丸わかりだよ!!マリオン・コティヤールの迫真の演技と、最後まで疑わせるような演出を入れたファインプレーが台無しだよ!

 

ちなみに、公式サイトのTOPにはインスタにあがっている感想がずらっと並んでいる。

 

情報が溢れかえる社会さ。でも、映画ぐらいは前情報なしで楽しみたいと思うんだよ。

ある程度ネタバレを見て、感動できるってわかって、その上で見るかどうか判別するんだろうな、普通の人は。なんとなく、ギャップを感じた瞬間でした。

 

 

【傷物語〈III 冷血篇〉】来場特典②混物語あかりトリプル(感想:ネタバレだらけ)

劇場版傷物語三部作を、特典の混物語を目当てに見た人も多いだろう。

 

私もその一人である。アニメの物語シリーズをすべて見ているわけではなく、西尾維新という作家が好きで、アニメは「ついで」に見ているタイプの人間だ。

 

というわけで、映画を楽しみにして見に来ているのはもちろんなのだが、それよりも特典の「混物語」を求めて映画館まで足を運んでいるのだ。

 

というわけで、傷物語〈III 冷血篇〉特典②、「あかりトリプル」について語りたい。

 

 

混物語とは?

物語シリーズの人物が(僕が手に入れた3冊については、阿良々木暦の一人称小説だった)、他の西尾維新作品の登場人物と出会い、絡む短編である。

目次を見ると全部で15冊あるようで、物語シリーズのサブタイトルと同様に、「【ヒロイン名】×××」というタイトルがついている。

たとえば、「まゆみレッドアイ」。たとえば、「くろねこベッド」。たとえば、「あかりトリプル」と言ったように(これらは僕が手に入れた3冊だ、全種集める気力はなかった)。

 

入手方法はシンプルで、劇場版傷物語を見に行けば、入場者特典としてもらえる。しかしえげつないのは、1つの映画につき、配布される混物語は4種あると思われること。

全て手に入れようとしたわけではないので、真相はわからないが、おそらく配られている冊子が週によって、変わっている。

 

公開1週目、「きょうこバランス」

公開2週目、「じゅんビルド」

のように。

 

ちなみに混物語にはご丁寧に目次まで記載されていて、以前に配られた冊子が何だったか確認できるようになっている。

 

目次の記載の区切れ方を見る限り、おそらく・・・(以下「あかりトリプル」目次から引用)

Ⅰ 鉄血篇

1w目 第忘話「きょうこバランス」(忘却探偵シリーズ掟上今日子

2w目 第強話「じゅんビルド」(最強シリーズ 哀川潤

3w目 第法話「のみルール」(伝説シリーズ 地濃鑿)

4w目 第眼話「まゆみレッドアイ」(美少年シリーズ 瞳島眉美)

 

Ⅱ 熱血篇

1w目 第病話「くろねこベッド」(世界シリーズ 病院坂黒猫

2w目 第血話「りすかブラッド」(りすかシリーズ 水倉りすか)

3w目 第刀話「ひていクリア」(刀語シリーズ 否定姫)

4w目 第殺話「いおりフーガ」(人間シリーズ 無桐伊織)

 

Ⅲ 冷血篇

1w目 第軍話「しおぎレンジャー」(戯言シリーズ 萩原子荻・紫木一姫・西条玉藻)

2w目 第招話「あかりトリプル」(戯言シリーズ 千賀三姉妹)

3w目 第喰話「りずむロックン」(戯言シリーズ 匂宮出夢・理澄)

4w目 ????(戯言シリーズ ???)

 ⇒ウィキで調べたら、「第大話 みここコミュニティ」ですって。これ読みたかった。

 

その後、あと3冊あるようだけど、映画はもう終わっているはずだし・・・。

どうやって手に入れるんでしょう?

クビキリサイクルOVA化したし、戯言シリーズNo1名作のクビシメロマンチストが映画化されたりしないかしら。

 

そして、何シリーズとクロスオーバーするんですかね?

まにわにとか、めだかボックスとか?

 

それにしても、戯言シリーズの優遇っぷりがすごいですね。人間シリーズと最強シリーズは戯言シリーズのスピンオフだし、大分幅を利かせている。西尾維新の最初の作品だから、当然なのかしら。

 

・・・さて、推論ばかりの前段は終えて、本題に入りましょう。

 

あかりトリプル あらすじ(ネタバレ)

まあ、ほとんどの人があらすじを知りたいから、この投稿を開いているだろうから、あらすじを書いてしまいます。

千賀あかり・ひかり・てる子3姉妹がゲストキャラ。戯言シリーズ第一作、クビキリサイクルに登場するメイド中のメイド達ですね。

 

以下、あらすじ、兼ネタバレ。

時系列としては、阿良々木君が高校三年生の十一月。

阿良々木暦 高校生活 最後の1年 年表公開! - <物語>シリーズ

なでこメデューサひたぎエンドの間ですね。

 

物語シリーズ屈指の天才、羽川翼を「鴉の濡れ羽島」に招待しにやってきた千賀三姉妹。しかし彼女らはあろうことか阿良々木暦羽川翼と勘違いしていた(ちなみにこの時羽川さんは放浪中で行方不明)。

天才を試す試験として、千賀三姉妹は阿良々木暦にクイズを出題する。三つ子の彼女らの中から、千賀あかりを当てるというクイズ。ただ、一発勝負ではなく、回答権は2回ある。

すなわち、これは人間を使った、「モンティ・ホール問題」。阿良々木君としては、羽川さんを得体のしれない島に送り出すわけにはいかないから、この問題を不正解で終えることを目指している。

が、結局、阿良々木君は本物の千賀あかりを当ててしまい、「鴉の濡れ羽島」へ連行されるところで「あかりトリプル」は終了。モンティ・ホール問題のトリックについては。実際に小説を読んでもらったほうが楽しめるだろうし、丁寧に説明するとなかなか長くなるから、ここでは割愛する。

 

次の「りずむロックン」に続くのか、はたまた別の話に繋がるのかは定かではないが、明確に次を連想させる終わり方だった。

そして、西尾維新さんの趣味が爆発しており、物語の大半を心理ゲームの解説に費やしている。千賀三姉妹と阿良々木君のイチャコラを楽しみたかった人にとっては、ちょっと残念な内容かもしれない。

ちなみに、全30ページ。特典にしては豪華すぎるぞ。

 

それでも、阿良々木君はブレない。(ネタバレ)

西尾維新作品中、最も愉快な主人公こそ、阿良々木暦だと私は思う。

彼の「愉快さ」はブレない。

 

瓜二つ、いや瓜三つの三姉妹からあかりを当てないといけない場面で、「触ってもいいですか?」と華麗にセクハラしようとする主人公。

羽川翼です。巨乳です。」と自己紹介する主人公。

羽川さんを演じようとして、語尾を「はね?」とする主人公。

 

心理ゲームがメインとは言っても、しっかり阿良々木暦阿良々木暦であったこと。それが僕にとっては嬉しいのだ。

(ちなみに、「まゆみレッドアイ」では阿良々木君が最高に阿良々木君していた。)

物語シリーズらしく、メッタメタである。(ネタバレ)

物語シリーズらしく、本作品のヒロイン紹介から物語は始まるわけだが、千賀三姉妹について彼は『クビキリサイクル』の登場人物紹介をそのまま引用したどころか、「世界観が違う僕」としっかり認めてしまっている。

メタメタである。物語シリーズだからこそできる、暴挙である。クロスオーバー感、頑張ろうよ。

しかし『クビキリサイクル』ファンとしては、「本」としてのクビキリサイクルの記述がこうやってクロスオーバー作品に載っているのはちょっと嬉しい。キャラクターの出張ではなく、戯言シリーズという作品がコラボしたような。

 

ちなみに「まゆみレッドアイ」と「くろねこベッド」については、そこまでメタメタしておらず、ちゃんと同じ世界観っぽい感じで物語が進んでいたので、扱い方は作品によって異なるのかもしれない。

 

ちなみに。

転載は控えるけれど、「あかりトリプル」には西尾維新さんの文章の癖が思いっきり露わになっている一文があって、にやりとした。

わざとわかりにくくした長文。「あかりさんかひかりさんかてる子さん」これだけで読みにくい。それが何回か続く長文。あぁ、西尾維新の文章だなあ、と読んでいて楽しかった。

 

ぜひ、西尾維新ファンの方は、なんとしてでも手に入れてほしい一作でした。

 

せっかくなので、「まゆみレッドアイ」と「くろねこベッド」の感想もいずれ。