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【ハクソー・リッジ】直視できなかった。(感想:ネタバレあり)

hacksawridge.jp

 

これも見てきた。

戦争物(特に史実に則ったもの)は重たいし、結構描写がきついこともあり、あまり見ることがないんだけれど、珍しく友人に映画に誘われたものだから。

あとは、主演のアンドリュー・ガーフィールドが好きってのもあるね。アメイジングスパイダーマンが好きなんだ。

 

結論から言うと、どぎつい戦争描写と流血に耐えられる人しか見てはいけない映画だった。私は残念ながら、そういう描写(頭を撃ちぬかれる映像や身体が欠損してしまう兵士が描かれている)が極端に苦手だから、後半はほぼ耳に手を当てて目を半開きにしてびくびくと子ウサギの様に震えながら映画館の端で震えていたのだった。

一緒に見に行った友人もこういった描写は苦手だったようで、「誰かと一緒に見てなかったら途中で逃げ出してたかも」とまで言っていた。私も同意だ。

 

なので、まともな感想は書くことは出来ない。しかし、せめてどんな映画かを伝えたいから、こうやって記事に起こしたい。というのも、描写がきついだけで、紛れもなくこの映画は見た人の心を動かすだけの強い力があったから。

 

以下ネタバレ含むので注意。

 

あらすじ

公式の「ABOUT THE MOVIE」を読んでいただけると分かるが、この映画は実在した人物、デズモンド・ドスが陸軍に入隊してから、第二次世界大戦の沖縄の戦地「ハクソーリッジ」での彼の活躍を描いた物語だ。

彼はハクソーリッジにて武器を持たずして衛生兵として75名の命を救った人物で、良心的兵役拒否者として、アメリカ史上初めての名誉勲章を授与されている。

 

この映画は大まかに以下の様に構成されている。

彼の生い立ち⇒入隊から戦地に赴くまでの訓練期間⇒ハクソーリッジでの戦闘

小心者の私にとっては戦闘シーンが長く感じたが、ボリューム的にはおそらく後半1/3がハクソーリッジでの戦闘だったと思う。

 

入隊から戦地に赴くまでの訓練期間に結構尺が費やされており、ここでの良心的兵役拒否者としてのデズモンドと周囲との軋轢がたっぷり描かれているがゆえに、終盤ハクソーリッジでの彼の活躍が映えていた。

 

何が言いたいのかというと、戦争を通じたデズモンドの活躍だけではなく、彼がどのような人格を持っていたのかを精緻に描いたヒューマンドラマとしての側面も強かったということ。あまり戦争ものを見ないから分からないけれど、人物の掘り下げがしっかりとなされていたのがポイント高かった。

彼が認められた瞬間がたまらなく良い

彼は良心的兵役拒否者として陸軍に入隊したため、周りの兵士たちからは臆病者と不名誉なレッテルを貼られることになる。

しかし、彼の意思は固く、仲間に暴力を振られても仕返しをすることなく受け入れ、命令拒否で軍事裁判にかけられることになっても、銃を握ることを拒んだ。幾度もなく彼は「戦場でこんな甘いことを言っていたら生き残れない。敵を倒すことが戦争だ。」と言われ続けたが、彼はそれでも自らの意思を貫いた。結果として軍事裁判では有罪とされなかったものの、ハクソーリッジに赴くまでは彼は「鼻つまみ者」として扱われ続ける。

 

しかし、ハクソーリッジでの彼の活躍を見て、仲間たちは彼を認めていく。宗教上の理由でデズモンドは土曜日は兵役につかないと宣言していたが、その土曜日上官に「君が必要だ」とまで言われるまで必要とされるようになった。結果として彼は土曜日にも拘らず、戦場に赴くのだけれど、出撃前に彼が祈りをささげているのを仲間全員で待っているシーンが印象的だった。そして、彼が大切に持っていた奥さんからもらった聖書を戦地で落とした際に、仲間の兵士がそれを探して彼の元に届けていたことも(訓練中彼の聖書が仲間たちに雑に扱われたシーンがあったからこそ、そのシーンが映えていた。そういう意味でも、陸軍の訓練の場面は良い「溜め」だったと言える)。

 

正しい意思を持った主人公が、認められていく様を見るのは清々しい気分になるものだが、私の感想はちょっと違っていた。

「軍事裁判にかけられてまで、自らの意思を貫こうとするのは狂気じみている」というのが最初に抱いた感想だ。事実、デズモンドの奥さんも、同じようなことを言っている、「銃を握れば、罪に問われない。人を殺すわけじゃないのだから、訓練は受ければいい」と。

視聴者としての私は、ずっと主人公側に立っていなかった。彼の意思を支持している側ではなかった。しかし、彼の意思が戦地に置いて多くの命を救っているのを目の当たりにして、彼の仲間の兵士と同じように、私自身も彼の意思を認めた。

「ようやく主人公が認められたぜ、すかっとする!」というよりは、私もデズモンド以外の登場人物と同じように、「やっぱりあなたの意思は正しかった」と気付きを与えられたようなイメージ。俯瞰的に彼を評価するのではなく、その他大勢の登場人物と同じように彼を認めていくというような心の動きがあったのが、なんだか新鮮だった。

父親や妻、彼を大切に思う人々との関係

デズモンドはハクソーリッジにて、兵士の仲間に認められることになるが、それ以前に彼の意思を貫くのを手助けしていた存在がある。それが父親と妻だった。

特に父親とデズモンドの関係性はこの映画において重要な位置を占めていた。

デズモンドと同じく兵士として戦った経験のある父。戦争で負った心の傷が癒えず、家庭内暴力を繰り返し、息子とは決して良好な関係ではなかった。当然息子が兵士になろうとしたときも反対したが、デズモンドはそれを振り切って兵士となる。

一つの山場でもある軍事裁判のシーンで、父親が元兵士の立場を活かし「良心的兵役拒否者」を守るための口利きをしたのは、父親が息子を認めた瞬間であった。

長年続いた親子の微妙な心のずれを解消したのも、デズモンドが頑なに自らの意思を貫こうとし、それを父親が認めたため。そして、デズモンドが銃を握るのを拒んでいる理由、信念を守り続けている理由が、父親に一度銃を向けてしまったことにあるという過去の経験にあるのも、美しい。

切っても切れない親子の絆のようなものを感じさせられるのが良かった。

 

そして、奥さんについては、前述したとおり、主人公を愛していながらも一般的な感覚を持ち合わせている視聴者に近い立場の視点を持っている重要な人物なんだよね。彼女がかなり視聴者の気持ちを代弁していた気がする。

 

ちゃんと史実に基づいた映画だった

映画の最後に、物語のモデルとなった実在の人物たちの映像が流れる。デズモンドについて彼の周りの人が何を思っているか、デズモンドが何を考えていたか。そういうのを生の声で最後に流してくるのは卑怯だよね。しんみりしちゃったよ。

 

てな感じで、つらつらと感想でした。いい映画だったけど、二度と見れないな。スゲー重かったもん。でも一度は見に行ってみるといいよ。