【傷物語<Ⅰ鉄血篇>】来場者特典④混物語まゆみレッドアイ(感想:ネタバレだらけ)
はるか昔、こんな映画が上映していた。
鉄血篇、熱血篇、冷血篇と三部作で公開されていた傷物語。第一部の鉄血篇が公開されたのは2016年の年始だった気がする。今日は、今更ながら一年以上の時を超えて、鉄血篇の、正確には鉄血篇の来場者特典であった「混物語 まゆみレッドアイ」の話をしたい。
「混物語」とは、物語シリーズの登場人物と他の西尾維新作品の登場人物によるクロスオーバー作品なのだが、まぁ細かい情報は以下の記事を参考にしてほしい。
僕は「美少年シリーズ」が西尾維新作品の中でも結構好きな方なのだが、読み始めたきっかけは「まゆみレッドアイ」にある。
↑いちおう、本編の感想もちょくちょくこのブログで書いてる。
何も考えずに鉄血篇を見に行ったら、たまたま「まゆみレッドアイ」がもらえた。なんだか、知らないキャラクターだった(流石に知らないキャラクターとのクロスオーバー作品は楽しめないだろうと思い、その場で冊子を閉じた)。後日美少年シリーズの既刊を読破し、「まゆみレッドアイ」を読んだら、ますますまゆみちゃんが好きになった。
という流れ。
要は、「まゆみレッドアイ」にはまゆみちゃんの魅力が存分に詰まっている、あるいは我らが阿良々木暦が魅力を存分に引き出してくれている、のである。というわけで、一年程度の遅れをもってして、ようやく感想を書いてみたい。ネタバレありだ、もちろん。
あらすじ
計40ページの掌編、全7章で構成。
一人称は阿良々木暦。ヒロインは当然、瞳島眉美。阿良々木暦視点での、まゆみの紹介から始まり、本編に移っていく。
暦いわく、「根暗というより陰湿でさえあった」。そこは本編との印象と相違がないようで、安心である。
暦がひたぎの誕生日(7/7)を祝うための、七夕星空観測デートの下見に北白蛇神社を訪れたのが物語の始まり。時系列的には、「化」と「偽」の間ということになるかな。
神社の社の階段でまゆみが頭を抱えているのを暦が見つける。まゆみの良すぎる視力を抑えるための眼鏡をなくしてしまった上に、何やら「ピラニア」が町の上空を泳いでいるのが見えてしまい、怖くて一人で下に降りれないとのこと(可愛い)。暦が付き添う形で、二人は山から下りて町に繰り出る。
その道中で暦がまゆみに対して度重なるセクハラ行為をするのだけれど、それについては後述。
本作のオチは、雨が降ってきたタイミングで、まゆみが女性であったことが判明したこと。
暦「君は女の子だったのかい!?」
まゆみ「いや絶対途中で気付いていたでしょ」
セクハラし放題だったからしょうがないね。
そして、道中にあった住宅地図の前にもピラニアが見えたこと、雨が降ったのと同時にピラニアがいなくなったことから、まゆみが見ていたピラニアの正体が判明したというのがもう一つのオチ。まゆみが良過ぎる視力を持っているがゆえに、町の鳥瞰図をランダムドット・ステレオグラフ(立体視の一種)として捉えてしまった、とのこと。
※ランダム・ドット・ステレオグラム (英: Random dot stereogram, RDS) は、一見ノイズのようにしか見えない画像だが、うまく焦点を合わせると立体が浮かび上がってくる画像である(wikipediaより引用)。
雨が降って見れなくなったのは、視界が雨で途切れたから。立体視するための空白がなくなってしまったから、とのこと。
なんで町に降りた後も上空にピラニアが見れていたんだろう?という疑問は残ったが(書いてあるのかもしれないけれど、僕には読み取れなかった)、良すぎる視力を活かしたトリックなのは良かったね。
ま、しかしピラニアの方のオチは割とどうでもいい。
大切なのは、まゆみの魅力が爆発しているところなのだ。
阿良々木君のセクハラ
年下の女性に対して容赦なくセクハラをこなす本編の阿良々木君が容赦なく「まゆみレッドアイ」でも活躍している。
いきなりハグをする、肩を組む、頬をさする、ポケットの中をまさぐろうとする、膝の上にのせる、口の中を観察する、こけたまゆみの身体を触診する、傷口をなめる、一緒にお風呂に入ろうとする、再度こけたまゆみのお尻の砂を払おうとする、
などなど。原作中で真宵にしでかしたセクハラよりもさらに酷い気がする。
暦「いやいや、君が女の子だったらもっと・・・」
まゆみ(ぶるぶる・・・)
みたいなやり取りが随所にみられるのも面白いところ。暦はまゆみのことを徹底して男性として見ているが、まゆみの正体は暦が大好きな年下女性なので、まゆみとしてはさらなる変態行為の鱗片を見せられ恐怖するしかないという構図。とても面白い。
あとは暦のキャラクター(年下女性には徹底的にセクハラする)を考えると、暦はまゆみを男性として認識してはいるが、「本当は女の子だとわかっていたんじゃないか」と読者が明らかに分かるのが面白い。その気持ちは前述したように、まゆみがオチで代弁してくれた。
美少年探偵団の外のまゆみ
美少年シリーズはまゆみの一人称小説。なので、第三者的なまゆみというのがあまり見れない。だから、阿良々木君(第三者)視点のまゆみが見れたのも、本作の魅力。
まゆみは自称、「性格が悪い」女の子ではあるが、第三者的にもしっかりとひねくれているようで、そこは安心。まゆみのひねくれた発言に対して、高校三年生の余裕を見せつける阿良々木君を楽しむことが出来た。彼的にも、「中学生が言っていると可愛いもの」らしいので、まゆみの自称「性格が悪い」が、第三者的にはそこまで度が過ぎているものではないということが分かる。
そしてもう一つ、まゆみが第三者に対して美少年探偵団をどう思っているかを語るシーンが入るのも魅力。まゆみは誇らしげに、絶対にあきらめない精神を持っている連中を知っていて、自分もそのメンバーの一人であることを暦に告げる。
本作では美少年探偵団の面々を明らかに軽視している発言が目立つが、しっかりと探偵団のことを愛している様が伝わってくるのが微笑ましい。
次回作への伏線?
本作の〆は、半年後に『美学のマナブ』と冒険することになる、といった次回作を匂わせるような形だったのだが、気になる点が一つ。
「双頭院学というとびっきりの美少女」と書かれているのだ。それも、美少女のところに傍点まで打ってある。
流石にマナブが実は女の子という可能性は考えにくい。「押絵と旅する美少年」のオチが不可解なものとなってしまう(まぁ本人以外の全員が性別を勘違いしていたなら、話は通るけれど)。
考えうる可能性としては、「まゆみレッドアイ」同様、マナブの性別を間違えるという展開。しかし美少年探偵団のリーダーと訊いておきながら、わざわざ暦が「美少女」と称する理由が分からない。
って書いてたけど、彼普通に作中で女装してたね。女装姿で出会ったのかな?
なんて謎を残したまま「まゆみレッドアイ」の感想を終えます。