定時後に映画館

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【オトメの帝国】百合はファンタジーである。

grandjump.shueisha.co.jp

 

面白いweb漫画を見つけてしまった。

「オトメの帝国」という岸虎次郎氏の作品。

最近「ジャンプ+」で1話から75話ぐらいまで一気に公開されていて、日々の楽しみにしている。既にコミックスは12巻まで発売されていて、グランドジャンプのHPの方では最新162話まで公開されている。

 

どんな作品かというと、グランドジャンプのHPから引っ張ってくるとこんな感じだ。

かわいくって好奇心旺盛。やかましいけれど憎めない。欲望に忠実なイマドキ女子高生の不思議な生態を、ちょっと覗き見してみます?新たな時代の先端をいく'10年代ティーンたちの、波乱に満ちた日々を描くセキララ百合コメディ!!

で、せっかく無料公開されているので、1話をまず読んでほしい。

www.s-manga.net

 

リンクを踏まない皆様に、さらにわかりやすく内容を説明すると。

 

◇とある女子高を舞台として、そこに通う女の子達の物語である。

◇男性はほぼ出ない。「オトメの帝国」なだけあって、女子高生だらけである。

◇5Pぐらいのショートストーリーをいくつも積み重ねていく作品である。

◇登場キャラクターは非常に多い。多種多様な女子高生の生活を楽しむことが出来る。

しかしキャラクターは使い捨てではないので、大きなストーリーの流れは存在する。

◇ジャンプ+で読むと登場人物の把握に時間がかかるが、どうやらコミックスには目次に登場人物表が描かれているようなので、非常にわかりやすい。

 

こういった感じである。まぁ説明を読むよりも、漫画を読んだ方が早いので(無料だ)、ぜひ読んでほしいのだが、そんなことを言ったらブログで取り上げる意味などなくなってしまうのである。

 

というわけで、何がそんなに面白いのかポイントを3つに絞って説明したい。

絵柄が妙にリアル

まずはここである。女の子が百合百合する作品は世の中には溢れかえっているが、大体それらの作品はまんがタイムきらら系の絵柄であり、極端なデフォルメが施されているものが多い。

いや、実際多いかどうかは分からないが、少なくとも僕が目にしてきた百合作品・女性だけが登場して彼らの生活を描く作品は非常に記号的なキャラクターが登場しているパターンが多かった。

 

しかし!漫画を読んでもらうと分かるが、「オトメの帝国」は絵柄が基本リアル路線である。流石青年向けコミックス、必要以上に目が大きかったり、人間とは思えない等身をしていることもない。

画力が高い上に、そして時々出てくるデフォルメされた絵も可愛らしい。

 

なので、まるで「本当の女子高生の生活」を読んでいるような感じで、没入感がある。

(ちょっと変態っぽくなってきたが、もうこの漫画を勧めている時点でその辺は覚悟している)

「はいはいフィクションフィクション」という前提をまずはぶっ壊してくれるのだ。あのリアリティのある絵柄が。

 

後述するが、この絶妙なリアルさというのがまずは大切なのである。

百合はファンタジーであるが、初めから「ファンタジーっしょ?」と斜に構えてみてしまうか、没入できるかでその価値は大きく変わってくるのだ。

ありそうな女子高生の生態と、あり得なさそうな百合感のバランスが良い

「セキララ百合コメディ」と記してあるぐらいなので、女の子の恋愛を描きながら、コメディ漫画であるのだが、それだけだと「はっはーフィクションだぜー」で終わってしまう。

 

しかし、「オトメの帝国」の素晴らしいところは、女子高生が「それっぽい」のだ。だから、彼女らがふざけている様子も「あぁこういうのが女子高ではあり得るんだ」と思えるし、一見なさそうな女の子同士の恋愛についても「あぁ!こういうのが女子高ではあり得るんだ!!!」と感嘆することが出来る。

その「それっぽさ」をどうやって演出しているのかの説明は難しいが、「登場人物が何を考えているのか」をかなり丁寧に描写しているのは、その「それっぽさ」に関連している部分だと思う。リアルにいる人間らしい悩みや思考の過程を描いているから、まず登場人物が記号化しておらず、本物の人っぽい。だからその人をベースとした、一見あり得なさそうなやり取りも、本物のように見える。

 

絵柄も相まって、ちゃんと女子高生がこの世に居そうなのである。そんな彼女らが思いっきり百合したりコメディしたりしてくれている。つまらないわけがないのだ。

 

百合である

結局のところここに落ち着く。

この作品には、ありとあらゆる形の百合カップルが次々と登場していく。ガチ恋愛をしているカップルもいれば、ぎこちない友情を築いていく陰キャと陽キャもいるし、子どもっぽい仲良しを楽しむ双子のような二人組もいる。

そのバリエーションが楽しいというのもあるのだが、やはり女の子同士のガチ恋愛を見ているのが一番楽しい。至福である。

なぜか。

男性である僕が、女の子と女の子の恋愛を傍目から見ているのは、「傷のない幸せなだけの恋愛の世界」を眺めているのに等しい。

世の中には恋愛を描いている作品が五万と存在しているが、それらの多くは男性と女性の作品である。そしてそれらを見るときに、僕は必ず感情移入をしてしまう。そして、リアルの恋愛と比較対照してしまうのだ。

 

過去の自分の恋愛を重ね合わせるとか。

壁ドンとかふつうやんねーだろwwwとか。

 

要は、フィクションで描かれる男女の恋愛には没入出来ないのだ。必ず、この現実の世界に持ち帰り、比較対照をしてしまう。その行為がどんなに虚しいものか。

 

美しい恋愛に完璧に入り込むには、僕が生きる現実との比較が出来ない高次元な恋愛を見せてもらうしかない。

そこで、百合である。

可愛らしい女の子と、可愛らしい女の子が、僕と一切関係のないところで幸せな恋愛をしている。そして、「本当にこんなことあるの?」と検討する余地もない。なぜなら、私は男性だし、当然ながら女子高出身でもないので、その文化を知る余地もないのだ。

だからこそ、浸れる。彼女らの恋愛を、この現実の一切合切を投げ捨て、信じることができるのだ。

前述したとおり「オトメの帝国」は「明らかにフィクションでしょ?」と「ちょっとリアルっぽいなこれ」が絶妙に織り交ぜられているので、より没入出来るのだ。

あからさまなフィクション感が出ている百合だと、「へーいやでもそんなことないっしょ」で終わってしまうので、このフィクションとリアルの絶妙な配合は重要である。

 

朝から凄い尖った記事を書いてしまったが、僕が言いたいのはこういうことだ。

リアルでは考えられない高次元恋愛こそが、我々に真の没入感を味合わせてくれる恋愛作品である。

百合に限らず、僕は読んだことはないがBL作品や、あるいは現代社会では比較検討しにくい歴史物や未来での恋愛の形もその高次元恋愛に含まれるかもしれない。

むしろ24年間生きてきて僕自身が女性同士の恋愛を目の当たりにしたことがないから百合が高次元恋愛に見えるだけであって、どちらかというと今後生きていても一切リアルで触れることが出来ない歴史もの未来ものの方が高次元恋愛としての役割を担えるのかもしれないな。

趣向は全く異なるが、人工知能と恋愛する「her」はなかなかリアルと切り離し純粋な恋愛作品として楽しむことが出来た。 

 

まぁ、こんな感じで比較的メジャーな映画で前半の濃い内容を中和させ、この記事は〆とする。

久しく漫画を定期的に読むことから離れていたのに、ジャンプ+を読み始めてからむさぼるように漫画を読んでいる。無料で読めてしまうとやはり食いついてしまうな。 

midoumairu.hatenablog.com

あわせてこちらもどうぞ。そろそろ60話に到達しちゃうから、ジャンプ+での集中連載は終わっちゃうけどね、食戟のソーマ