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【gifted/ギフテッド】クリス・エヴァンスによる愛すべき父親像(感想:ネタバレあり)

www.foxmovies-jp.com

マーク・ウェブ監督の作品が好きだ。ヒットには至らなかったようだが、僕はアメイジングスパイダーマン2作も大好きだし、マインド童貞が感情移入できる最高の作品「(500)日のサマー」ももちろん好きだ。

彼の最新作ならば見るしかない。

 

こういうハートウォーミングな感じの作品は、いかに人間の内側を描くか、一つ一つのシーンや言葉選びが非常に重要だと思うのだけれど、僕の好みにドンピシャなシーンがいくつもあって楽しめる作品だった。

あらすじ(ネタバレなし)

TOHOシネマズの映画紹介の文章が優秀なので、転載させていただく。

hlo.tohotheater.jp

フロリダに暮らす、ちょっと変わった2人と1匹の家族。7歳の生意気ざかりのメアリーと、彼女の叔父でシングルのフランク、そして“歴史上一番すごい猫”のフレッドだ。互いがいるだけで、毎日が記念日のように楽しい時間は、メアリーが学校へ行くことになり揺らぎ始める。彼女には、生まれながらにして数学の天才的な才能(ギフテッド)があった。フランクはメアリーの英才教育を頑なに拒むが、そこへ縁を切ったはずのフランクの母親が現れ、彼からメアリーを奪おうとする。歴史を変える才能の開花か、愛する者と生きる人生か──果たして、メアリーにとっての本当の幸せは?

 

親と子どもの愛を描くのに、血縁上の親子ではないという設定や、それゆえ親権問題が生じるのはありがちな展開だ。このような問題が発生すると精神的なつながりを描きやすいからだろう。

 

例えば最近見た映画だと、「あしたは最高のはじまり」もこんな感じの設定だったな。これも良い映画だった、泣きそうになっちゃったもの。

ashita-saikou.jp

 

閑話休題。別にありがちな設定や展開を悪く言っているわけではない。前述したとおり、どんでん返しがないような先がある程度読めるような安心感のある脚本の中で、いかに人を描けるかが大事なのだから。

 

「ギフテッド」はその「安心できる脚本」そのもので、変などんでん返しがあるわけでもないし、視聴者はみんな幸せな気分で劇場を去れるようなストーリーになっている。

 

公式ページの「STORY」にも中盤までの展開が丁寧に書かれているし、もうこの場でオチも書いてしまうが、裁判の結果折衷案として一度はメアリーは里親のもとに預けられたものの、イブリンは自らの教育方針の誤りに気付き、メアリーとフランクはまた一緒に暮らし始める。

メアリーは大学の授業を受けながら、元々いた学校の同級生たちとも遊ぶ生活を送ることになり、見事に「普通の暮らしをさせたい」フランクと、「徹底した英才教育を施したい」イブリンの考えの折衷案が採用されたわけだ。

 

まぁ、あらすじはこんな感じなのだが、ここから細かい好きポイントをあげていくぞ。

決して悪者はいない

フランクという人間の魅力については後述するが、彼とは対照的な性格であるイブリンがこの物語で重要な役割を担っている。この作品において最も「あぁ、こういう人いるよね」と思えるような人間味のある登場人物だったので、僕は彼女のことが大好きだ。

 

彼女はフランクとメアリーの関係を引き裂く登場人物、簡単な言葉を使ってしまえば「敵」に当たるのだが、ただの憎まれるキャラクターで終わらせなかったのがこの作品の温かさ。

「でもイブリンの言ってることもわかるよね。決して彼女の身勝手ではないよね」という気持ちで、フランクと同じように彼女のことを視聴者は許す気持ちになる。メアリーとフランクだけにライトを当てず、しっかりと彼女という人間を描写しているからこそだ。

 

イブリンは数学者として夢を追っていたが、それは叶わなかった。だから、娘にその夢を叶えてほしいと、英才教育を施した。そういう背景を想像させる会話がメアリーとイブリンの間でなされていたのだけれど、ちょっとしたその会話一つで彼女という人間の脆さを描き、同情してしまうような気分にさせられる。

※イブリンに限らず、フランクやボニーなど、主要キャラクターの「弱さ」がしっかりと描かれているから、この作品の登場人物には人間らしさがしっかりとあるのだと思う。

 

他にも、裁判所を出てフランクとイブリンが冗談を飛ばしあう会話を尺をとって描写していたが、それにより「決して二人は敵同士ではない、考え方がすれ違っているだけ」という認識が持てる。フランクとメアリーの親子を描く映画ではあるが、同時にイブリンとフランク、そして亡くなってしまったダイアンとの関係を描いている映画でもあるのだ。決してイブリンは記号的な「敵」になっていない。

 

フランクは「自分が父親であることがメアリーにとって良いことなのか」物語の中で葛藤し続けているわけだけど、イブリンは自分が正しいと信じ込んでしまったある意味可哀想な親だった。

裁判のシーンでフランクがイブリンの弁護士に「あなたが親をしたいだけで、メアリーのことを考えられていない」と責められているシーンがあったが、まさしくその考えでいたのがイブリンだというのは最高の皮肉。

 

そんな彼女も本作のラストシーンでは自らの夢が叶うのと同時に、自分の教育の過ちに気づくわけだけど、決して手放しに幸せになれたわけではない絶妙な終わり方は、本作のテーマである「親のエゴと子の幸せ」の結論をよく表せていると思う。

イブリンとしては幸せだが、ダイアンの親としては不幸。

対してフランクはメアリーの幸せを自らの幸せと重ね合わせる生き方を選んだ。

イブリンがいるからこそ、メアリーとフランクの幸せが映えていた。

本当にイブリン、名キャラクターだと思う。

 

親としてのフランクが最高

対して視聴者が「何て素敵な父親なの・・・」と惚れ惚れしてしまうのがフランク。

クリス・エヴァンスアベンジャーズシリーズのキャップも演じているのだけれど、彼の優しい顔つきは、懐の広さや包容力のある人物を演じるのに非常に適している。クリス・エヴァンスはフランクを完璧に演じきっていた。メアリー役のマッケナ・グレイスちゃんばかり取り上げられているが、クリス・エヴァンスもめちゃくちゃよかったぞ。彼がいるバーだったら僕だって毎週金曜日の夜に通ってしまいたくなるわ。

 

特に良かったのは、メアリーが実の父親に見捨てられたことを嘆いていたとき、病院に彼女を連れていき、見知らぬ家族が出産を喜ぶところを見せたところ。「何でそんな素晴らしい考えが浮かび出てくんだ・・・!」と脚本家とフランクに心の中で拍手喝采であった。

 

あとは、メアリーに対して「少しでも自分の時間がほしい」と悪態をついた後に、彼女に誠実に謝っているシーンが好き。「人は本心じゃないことを言うものなんだ」とか、凄く納得感のある言葉が次々と出てくる名言メーカーだった。

 

里親に預ける決意をしたのも、メアリーが欲しがっていたピアノがその家にあったことだという描写も大好き。そメアリーが大好きなフレッドが一緒に居てられることを真っ先に確認したことも最高。もう次々と好きだったシーンがあふれ出てきてたまらない。

 

そんな感じで父親力が高すぎるフランクなのだけれど、娘の先生を抱いてしまったり、ロバータに情けないところを散々さらけ出したり、自分のエゴを押しつけていないかと悩み続けている弱さもちゃんと描かれていて、バランスの良い「素敵なお父さん」に仕上がっている。

 

「この人すごく好き!」ってなれるところもこの作品の良さの一つだ。主要登場人物の人間的魅力に隙がない。

最後に

マッケナ・グレイスちゃん、可愛い。

ジェニー・スレイト、エロい。

 

書きたいことがたくさんありますが、とりあえずはこんな感じで終わりにします。