【ソラニン 新装版】種田が死んだあとの生活(感想:ネタバレあり)
全然買えなかったんだけど、遂に手元に届いたので読んだ。
「ソラニン」、原作も映画も曲も好き。新装版が発売されたということで、ひっさびさに書籍を購入してしまったよ。
「ソラニン」は話の結末云々じゃなくて、読んでいてその雰囲気を楽しむ作品だと思っているので、「新装版」で新たに追加されている要素について簡単にまとめるぞ。
ハードの話
YSC版ソラニン(右)より一回り大きい。
YSCソラニン2冊分を重ねたよりちょっと厚いぐらい。
紙質柔らかい感じでふにゃふにゃしてるので、持ち運びには向かないかと。
カバーを外すと多摩川?河川敷(作中で何度も出てきた河川敷)の写真が。
新規書下ろしイラスト
話と話の間に新規書下ろしイラストが掲載されている。主要キャラクターの1点ものイラストが複数。バイク、ギター、CDジャケットなどのイラストもある。
ちなみに全部の話と話の間にイラストが入っているわけではなく、作中の風景や舞台を再現した写真も掲載されている。こんな雰囲気だったんだ~ってのが実写で見えるのはちょっと嬉しい。
新規書下ろしイラストは10年ほどの月日が経っていることもあり、かなり画風が変わっている(あとがきに書かれていたが、本人曰く10年前は「下手」だったらしい)。「ソラニン」本編と今のいにおさんが描いたキャラクターを見比べられるので画風の違いが際立つ。
今のいにおさんのほうがキャラクターが丸っこくて優しい感じ。種田とかは一瞬別人に見えた。
YSC版未収録カラー
巻頭に半ページサイズ2枚、見開きサイズ1枚、計3枚のカラーイラストがある。
芽衣子と種田が手を繋いでいるイラスト(半ページ)
楽器やアンプに囲まれて寝転がっている芽衣子、加藤、ビリー(見開き)
種田と芽衣子が暮らしていた部屋にもたれかかるように座っている芽衣子(半ページ)
って内容。
「未収録カラー」となっているので、新規書下ろしではないと思われ、連載当初に描かれたイラストである可能性が高い。僕が見た感じ、最近の画風っぽくはないなとも思った。
YSC版未収録読み切り「はるよこい」
いつ描かれたのか分からないけれど、おそらく「ソラニン」本編よりは後で、完全新作「第29話」よりは前に描かれたと思われる作品。計16ページ。
芽衣子がいなくなった後の部屋に入居する女性と、その彼氏の短編。本編に出てきていた人物とは全く関係ない人々。
第三者が勝手にかつてその部屋に暮らしていた芽衣子と種田の暮らしを想像しているのだけれど、「どこかで普通に暮らしてる」とその女性は結論付けている。種田が死んでから彼を取り巻く人間たちの暮らしは一変したのだけれど、第三者的に見たらそれは特別なことではなく、死んでいようと生きていようと関係ないんだなあとなんだか寂しい気持ちになってしまった。
「第29話」
新作。絵柄は新規書下ろしイラストと同様、ちょっと丸っこい感じになっている。
芽衣子が36歳になって、可愛らしいお姉さんになっている。今のいにお絵柄に彼女の雰囲気がドンピシャでいい感じ。
芽衣子は本編で名前さえ出てなかった男と結婚し、妊娠。
加藤とアイちゃんは今でも仲が続いていると思われる。アイちゃんの指を確認したけど、指輪をしている形跡はなし。結婚しているかは不明。
加藤とビリーは未だにバンド活動をしている。
ビリーはガールズバーの女子大生にハマっているらしく、結婚はしていない。
作中のラストで芽衣子がソラニンの歌詞を思い出すシーンがあるのだけれど、それ以外では種田を匂わせるような描写は一切なかった。芽衣子も種田を思い出しているというわけではなく、ソラニンの歌詞を思い出して「これからも前に進まないといけない」と気持ちを新たにしているだけ。種田はもう完全に過去の人になってしまっている。
あとがきにいにおさんも書いていたけれど、なんだか種田が可哀想だ。
まぁそれでも残された人は生きていかなければいけないし、いつまでも悲しみを引きずっているわけにもいかないのだから、仕方がないんだろうね。
ソラニン本編である人が死んだあとの再生を描き、その後の話(29話、はるよこい)で死の忘却を描いている。本編がドラマチックだったが、その後の話は妙にリアル。オチのつけ方としてはメリハリがついていて最高だと思う、「いつまでも種田を忘れない」なんてフィクションめいた話になっていたらまさしく「蛇足」だったから。
あとがき
見開き1ページのあとがき。
作者は種田が嫌いだったらしい。
その他、種田は自殺だったのか、事故だったのかへの作者なりの解釈が書かれていて面白かった。あれは、種田の願掛けなんじゃないか、といにおさんは言っている。
「渡り切れたら、上手くいく」みたいな。
以上、新装版の新要素および感想でした。
29話がソラニンのオチとしては最高だったので、1600円払って良かったと思っている。
ぜひ、ファンは購入してほしい。