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ずっと真夜中でいいのに。東名阪ツアー「1st LIVE〜まだまだ偽りでありんす。〜」@名古屋 備忘録としての感想

zutomayo.com

 

「秒針を噛む」からハマって、数回ライブを申し込んだが一度も当たらず、ようやく東名阪ライブの名古屋公演を当てて、ライブに参加することが出来た。

とても楽しかったので何が起きたのか、そしてこの感情を残しておきたい。

ちなみに、記載内容に自信があまりない。これまでもライブ実施の度にしっかりとしたライターがレポートを書いてHPに掲載してくれているので、正しい情報はツアーが終わったあとにそちらを確認してくれるといいと思う。

 

会場は名古屋ダイヤモンドホール。会場のキャパはスタンドで1000名で、僕の番号が750番台だったので、やや会場中央よりも後ろよりで参加。前方にステージが、右手にモニターが配置されている箱。

ステージには工場を思わせるようなパイプといくつかの時計。時刻は現実のものとは異なり、アナログとデジタル。逆さまに配置されていうものもある。中央には鳥かごのようなものに、オレンジ色のランプが閉じ込められている。

 

開演時刻になると、モニターに「秒針を噛む」のイントロとMVを彷彿させるいくつかの映像の断片がダイジェストのように流れ、ガラスが割れたような音とともに、映像が粉々に散る。そしていくつかのMVに登場しているハリネズミ(うにぐりくんというらしい。ずとまよには「雲丹と栗」という可愛らしい楽曲があるが、それを彷彿させるナイスなネーミングだと思う。可愛い。)が左右交互に手をあげるアニメーションの横に、「お手元の眼鏡をかけてください」的な文字が。会場に入る際に、紙製の眼鏡が配られていたのだ。ツルにあたる部分に「ずっと真夜中でいいのに。」のロゴタイプ、そして視線を遮るように縦長の「目」がレンズに当たる部分にあしらわれている。

かけると、当然なにも見えない。すると、そのまま「秒針を噛む」のイントロが流れてくる。おそらく、目の前にACAねちゃんがいるのだろうが、見えない。そのまま、眼鏡をかけた状態で歌が始まる。実は去年、アルバムが発売される前に行われたミニライブのライブレポートを読んでいたので、わざわざ今回もメガネが配布されたときのためにコンタクトを付けてきたのだけれど、「このままメガネをかけたままなのだろうか」という不安と、MVを幾度も視聴し、購入した「正しい偽りからの起床」で何度も聞いた曲が生で展開されていることへの興奮、期待が入り混じって、あの時の感情は正確には言い表せない。正直、混乱していたと思う。だから、ACAねに「めがねとっていいよ」と言われたのも、どのタイミングだったかよく覚えてない(多分1番のサビが始まる前には言われていたと思うけれど)。彼女の一言で会場が沸いて、僕も同じように沸いて、目の前にライトを背面から浴びて歌っているACAねがいる、ということが途轍もなく幸せなことのように感じた。本人曰く「桜の時期だから」と髪の毛をピンク色に染めていた。かなり遠めだし、後ろからライトが照らされている場面が多かったので、彼女の姿をしっかりと見ることは出来なかったが、どちらかというとそういうことよりは、普段姿を現さず音楽だけを公開してきた謎に包まれた人物が目の前にいることが重要であって、むしろビジュアルを前面に押し出そうとも隠そうともしない姿勢が好きだ。サポートメンバーは左手にギター、奥にドラム、右手奥にベース、一番右手にキーボードという配置。なお、最初の「秒針を噛む」に限らず、ギターの方は終始楽しそうに弾いていたので彼を見ているのも楽しかった。

 

「秒針を噛む」に限らず、すべての楽曲について、生で歌っていながらCD音源に劣らぬ歌唱力だった。歌唱した曲は、正確にはカウントしていないけれど、「正しい偽りからの起床」に収録されている6曲とMVが後悔されている「眩しいDNAだけ」を我々が訊いたことがある曲だとすると(漏れていたら申し訳ない)、聞いたことがある曲と聞いたことがない曲が半分ずつぐらいだったと思う。2曲目は確か「ヒューマノイド」、3曲目には聞いたことがない曲が始まった(ハゼの曲?)。

新曲は疾走感あふれるアニソンっぽい曲からバラード調のものまでさまざま。歌詞もしっかりとストーリー立てて構成されているものから(これが意外だった、こういう詩も書くのか、と)、まさしく「詩」なものまで。一度しか聞いたことがない曲についてレポートを書けるほど筆力が高くないのが残念だが、「正しい偽りからの起床」でも方向性が違う楽曲6曲が揃っている中で、さらに新しいずとまよの世界が広がったような印象を受けた。手元で聞けるようになるのが楽しみだ。

ちなみに既存曲で一番印象に残ったのは・・・、ライブ特有のCメロ後の「満たされていたくないだけ」の伸びが気持ちよかった「眩しいDNAだけ」もよかったけれど・・・、やはり一番は「雲丹と栗」。twitterで音が出る黄色い鳥の写真をアップしていたが、あれも演奏に使われたのだ。他にも、例えばACAねが持っていたのはフライパン?(もしくは中華鍋?というのだろうか?)とオタマだったし、その類の音の鳴る道具(正確に見えていない・・・)を会場の最前列にいる客に配って、手拍子の代わりに音を鳴らしていた。その他大勢の客は全員手拍子で曲に参加したのだけれど、キャッチーで可愛らしい曲にそういった面白い鳴り物を用意して、皆で少しサビを歌ったりしながら参加する一体感が生まれる曲があるのは楽しい。

他にもACAね本人が大き目のライトを持って暗くなった会場をぐるぐると照らしたり、アンコール前の最後の楽曲だった「脳裏上のクラッカー」でクラッカーを鳴らしたり、彼女自身が全力でライブを楽しもうとしているのが伝わってくるライブだった。

 

MCも数回挟んで、楽曲に対する思いを話したり、初めてだという名古屋でのエピソードを話していた。会場は26になる僕よりも明らかに年下かと思われる人が多く、男女も半々。年齢層が若いこともあってかACAねからの問いかけに応える声、声援も多く、それに丁寧に答えるACAねが印象的だった。静かに息をつくようにゆったりと話す喋り方がとても聞き手を安心させる。ちょっと外れたボケをかます若い男性は良くライブ会場で見かけるが、そういった声へのツッコミもものすごく優しい感じがして良い。かなり会場の雰囲気も良く、ACAねが「ありがとう」というと会場からもいくつもの「ありがとう」が返ってくる優しい空間が展開されていた。僕はグッズを買わないタイプの非模範的な参加者なので結果購入はしなかったけれど、アンコール後のMCでしっかりとグッズのこだわりについても話していた。

話はそれるが、ACAねさんの安心させるゆったりとした話方の中に、妙な色っぽさもあるアンバランスさがとても好きだ。打って変わって歌っているときの力強い声も。ライブならではのトークが、曲を聴いているだけでは気付けない彼女の声の良さに気付かせてくれた。

 

後は印象的だったのは、「秒針を噛む」を1曲目に演奏をしていながら、アンコールでも「秒針を噛む」を演奏したこと。つまり、1回のライブで同じ楽曲を2回演奏したことになる。が、正直彼女、というかずっと真夜中でいいのに。のスタートがこの楽曲にあり、ずとまよを飛躍させたのもその楽曲の異例の再生回数と話題性であり、おそらく会場にいる多くの人間がその楽曲を待ち望みにしていたであろうことを考えると、「同じ楽曲は2回演奏しない」という常識にとらわれた僕や、もしかしたら他の人にとっても、とても良いサプライズになったのではないだろうか。「このまま奪って隠して忘れたい」を会場皆で歌う、というのもグランドフィナーレ感があってとても良かった。

アンコールは「秒針を噛む」1曲だったが、その後モニターにフジロック出演決定の告知とサポートメンバーの紹介、そしてACAねのメッセージが掲載されてライブは終了。

どうやら今回、名古屋から参加した人と名古屋以外から参加した人は半々ぐらいで、僕も有給をとり東京から遠路はるばるバスを使って参加したのだが、そこまでしてでも参加出来てとても良かったと思っている。ツイッターで検索すると、中には名古屋の翌日の大阪公演にも参加し、「雲丹と栗」で使うために自前の食器を持ってきた人もいたようだ。

 

ずとまよは何というか「隠す」のが上手い。ACAねの素性は一切わかっていないし、ライブで初めて我々が耳にするような楽曲がいくつもあり、定期的に、少しずつ展開されていく。youtubeSNSディスコグラフィで高められた欲求が、気持ちいい形で発散されるライブという場。ずとまよのキャラクター性もあり、会場の雰囲気も熱気がありながらも穏やかで、徐々に高まってきたものが綺麗に花開くような印象があった。「ライブに行って生で聞くのが当たり前」という感覚で日々色々なミュージシャンのライブに参加している身としては、今回のライブは「溜め」がすごくあったし、感慨深い一夜にすることができた。

本当に、終わったその日は、ずっと真夜中でいいのに。と思った、今日が終わらればよいと。

また参加したい。フジロックは真昼間だよね?また雰囲気が違いそうで面白そう。