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【天才作家の妻 40年目の真実】身勝手な男と賢い女(感想:ネタバレあり)

ten-tsuma.jp

公式URLが「ten-tsuma」なの、最高にウケますね。

グレン・クローズさんが第91回アカデミー賞主演女優賞ノミネートした「天才作家の妻」見てきました。

 

女性は「こういう身勝手な男、いるわ~」、男性は「うっわ身勝手だわ気を付けよ」になる、我々の生き方に大いに貢献してくれる作品だったので、感想を書きます。

これはネタバレをしないとまともに感想を書けないので、いきなりオチを書きます。どちらかというオチが大事というよりは過程を楽しむ映画です。

あらすじ

簡単に物語の流れを説明してしまうと、

①ジョゼフ・キャッスルマンがノーベル文学賞を受賞。妻のジョーンと息子のデビッドも授賞式に同行することに。

②記者のナサニエルが、妻ジョーンがジョゼフの作品を代筆していると推測。ジョーンやデビッドに揺すりをかける。

③ジョーンは当然否定。しかし、真実は物語の構成力があるジョゼフが初稿を書き、文章力・表現力に秀でているジョーンが完成させる共同著作であった(過去を回想する形での描写なので、物語中ジョーンは一切デビッドやナサニエルに真実は告げていない。)。

④ジョゼフの度重なる身勝手な行動にジョーンが激怒。喧嘩になり、ジョーンは離婚を言い渡す。喧嘩中にジョゼフが心臓発作となり死亡。

⑤帰りの飛行機でナサニエルに「夫の名誉を傷つけるような記事を書いたら訴える」と伝え、隣にいたデビッドには「真実を帰ったら話すわ」と伝えてエンド。

と言った感じ。

この作品の面白さは、作中の至る所に夫ジョゼフのクズ感を散りばめているところと、それを踏まえたジョーンの決断にある。

 

さぁ、ジョゼフのクズっぷりを振り返っていこう!

①浮気癖

そもそも、ジョゼフとジョーンが結婚したのも、浮気がきっかけ。既に妻子持ちのジョゼフがジョーンを誘惑、ジョーンが寝とる形で結婚した。

作中ナサニエルとジョーンが酒を飲むシーンがあるのだが、その時ジョゼフの元妻の話となる。

ジョゼフの元妻は「あの夫を引き留めてくれてありがとう」とジョーンに伝えてくれと言ったそうだ。

 

ちなみに、それだけでなくノーベル賞授賞式に同行していた若い専属カメラマンとも浮気しようとした始末。それもジョーンにばれて喧嘩になりかけるが、孫が生まれた報告の電話が都合よくかかってきて、喧嘩は収まる。その時のジョゼフのセリフが「つまらない喧嘩はやめて」だからもう救えない。いや、お前の浮気が原因だろうと。

 

なお、それ以前にも何度もジョゼフは浮気を繰り返しており、その度にジョーンはそのやり場のない怒りや悲しみを自らの作品に投影することで感情のセーブをしてきたとのこと。ジョゼフが彼女にそれを強要したかどうかはジョーンが激怒状態での主張なので定かではないが、そもそも浮気を繰り返している時点で問題ありである。

②自らの作品という意識

ジョゼフが売れるきっかけとなった作品は、はじめてジョゼフが初稿を完成させ、ジョーンが推敲・編集をした作品であった。その時は「僕たちが書いた」と言って二人で喜び合っていたのだが、物語序盤でノーベル賞受賞の電話を受け取ったときには「僕が書いた」と喜んでいる。

作品内で描かれている順番はノーベル賞受賞のシーン→過去の回想シーンなので、最初見たときに違和感はなかったのだが、あとから思い返すと「僕がノーベル賞を取った」と言って手を取り合って喜んでいるシーンの直後、我に返ったように冷静になるジョーンには含みがある様にも見えたかもしれない。

 

また、予告編にもあるが、夫は「妻は書かないよ」と平然と言ってのけている。妻の前で。


映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』予告編

 

③熱い手のひら返し

物語の中盤、ジョゼフが自らに疑惑の目が向けられていることを知ったのだが、それ以降の態度の変わりっぷりが清々しい。

②で記載したとおり、自らの作品であることを主張していたのに、「詐欺」と疑いをかけられてから急になよなよとしだし、ジョーンがあらかじめ「挨拶では私のことに触れないで」と言われていたのに、自らの挨拶を全てジョーンへの賛辞で使い果たしてしまう。(これが原因でジョーンは激怒した)。

 

その後ホテルに戻った後の迫真の夫婦喧嘩でも、結果「ではなぜ僕と結婚した」と妻に責任転嫁(まさしく転"嫁")する始末。どうしようもない。

 

まぁ、このように、作中でどんどんジョゼフの屑っぷりが露呈していくのだが、対してジョーンはひたすらに賢いのだ。

自らのプライドを胸にしまい、決して対外的に自らの功績を公表しようとしない。なぜなら、それをしたところで自分が得するわけがないから(自らが書いた作品がノーベル賞を受賞したのに、その名誉さえも汚されてしまう)。

だが、ラストシーンの描写を見る限り、彼女にとって大切な家族にはおそらく真実を話すのだろう。自らのプライドを保つための、行動を最適化する頭の良さ、計算深さを僕は終始感じていた。しかし一方で、ジョゼフがいなければ自らが著作で大成することはなかったと分かっているし、長年連れ添った彼に対して愛情を感じているからこそ、ジョゼフに敬意を払っている。

あまりにジョーンの人間が出来すぎており、たいしてジョゼフが屑過ぎて「ちょっとこれは仕組まれた感が強いな」と冷静に考えようとするのだが、問題は、ジョゼフの屑っぷりも、それに対しての彼女の反応もあまりにリアリティがありすぎて、「これって普遍的な夫婦が抱えている問題だよな」と深刻に考えてしまうところにある(その"問題"こそが本作の最大の魅力なのだが)。

 

決して心が晴れる作品ではない。だが、人間が抱える自尊心や夫婦関係の闇などをリアルに描いた素晴らしい作品だ。

僕からの警告を1点。絶対に恋人や家族とは見に行かないほうが良い。僕は一人で見に行って良かったと心から思っている。