【ペンギン・ハイウェイ】夏の少年とお姉さんのおっぱい(感想;ちょっとネタバレ)
見てきた。
森見登美彦氏が好きなのだが、「ペンギン・ハイウェイ」は原作からしていわゆる森見登美彦らしさ(腐れ大学生×京都)から外れたかなりの意欲作だったので、見るのが楽しみだった。
※ただし遥か昔に読んだので、ディテールは思い出せないほぼまっさらな状態で鑑賞。
とても面白かったので、物語の核心には触れずに感想を書きたい。
あらすじ
ABOUT THE MOVIE|映画『ペンギン・ハイウェイ』公式サイト
こちらを読んでいただきたい。
簡単に説明すると、
■研究熱心な小学四年生のアオヤマ君が主人公。
■アオヤマ君が住む町にペンギンが出現
■アオヤマ君が大好きなお姉さんが、ペンギンを出現させる力があることが判明。
アオヤマ君はペンギンとお姉さんの謎について調べることにする。
■さらに、アオヤマ君の同級生のハマモトさんが発見した謎の球体、通称"海"の研究にも
同級生のウチダ君と一緒に取り組むことに。
■お姉さん、ペンギンたち、海の関係を少しずつアオヤマ君は解明していく。
物語のクライマックスで、アオヤマ君がその謎を解き、街のピンチを救う。
といった感じだ。
スタッフ/キャストの話
劇場を後にしてから、記事を書くために調べたのだけれど、変な声が出てしまったので、言及しておきたい。
監督:石田祐康氏
僕はアニメにあまり精通していないので、初めて見る作品だなあと思っていたら、見たことがあった。
2009年に発表された自主制作アニメーションらしい、当時目にして驚いた記憶がある。
女子学生がすごい勢いで、パンツ丸出しで、街を突き抜けていく作品である。
ペンギンハイウェイのクライマックスシーンでも、アオヤマ君、お姉さんがペンギンたちと一緒に街をすごい勢いで駆け抜けていくシーンがあるのだけれど、「フミコの告白」に近しい疾走感があった。
(もちろんグレードアップしているけれど、ルーツがここにあるんだな、と明確にわかる程度には似ている)
「フミコの告白」が気に入った人は、大画面・大音量の劇場でグレードアップしたアニメーションを見れるってだけでも、足を運ぶ価値があるぞ。
脚本:上田 誠 氏
本作、彼が監督をしていることを知らなかったのだけれど、本作のオープニングで彼の名前が出たときとても安心した。
森見登美彦作品は幾度かアニメ化されているが、上田氏が脚本を担当している作品は「四畳半神話大系」および「夜は短し歩けよ乙女」。原作の雰囲気を損なわずに、原作より長尺のアニメ版(四畳半)、そして劇場版向け(夜は短し)に内容をアレンジした手腕がある。
今回は原作をあまり覚えていない状態で見たので、「原作と違う!」問題はあまり発生しないとは思っていたが、それにしても彼が脚本を担当しているのは森見ファンとしては安心ではあった。
声優たち
所謂本業声優ではない人が混じっているが、基本的には皆さん上手。
アオヤマ君のお父さんを担当しているのが西島秀俊氏なのだが、皆がアニメーション向けの声を当てている中で、彼がのっぺりしているような印象を持つが、確実にアオヤマ君のお父さんのキャラクターを狙った演技なので、まあそこまで気にならない。
特にお姉さん(CV蒼井優)と、ウチダ君(CV釘宮理恵)がはまっていたので良し。
ウチダ君が最高に可愛い小学生やってた。釘宮理恵さん強いわ。
小学生の視点で「夏の小冒険」が楽しめる
本作の魅力は、小学生の視座で夏の物語を捉えることが出来るところにある。
「夏っぽさ全開の画像を見ると、胸が締め付けられる」という経験をしたことはあるだろうか。本作は、それを約120分間楽しめるイメージ。
それも、感受性が豊かで、瑞々しい感性を持った子どもの視点で夏を楽しめるのだから良い。
小学生同士のとか自由研究とか冒険とか年上の憧れのお姉さんとかどうしようもない別れとか、そういった「懐かしい!ちょっと切ない!」というノスタルジー要素が夏に乗っかった感じだ。
もちろん、本作がこのような作品として完成されたのは、「小学生の物語なんて感情移入できないよ」とならない工夫が散りばめられているからだと思う。
例えば、基本的にカメラが小学生の視点になっているので、アオヤマ君の目で物語を楽しめるようになっている。こういった細かい配慮が没入感を作り出している。
話が少し逸れるが、タイトルに書いた「お姉さんのおっぱい」が好きなアオヤマ君の目線で物語を楽しめたらどうなるか。そう、お姉さんのおっぱいが常に強調されているという素敵な物語になるのである。こだわりがすごいので、楽しみにしていてほしい。
あとは、脚本で言うと、アオヤマ君は「小学生」という枠とは多少外れた、大人びたところがあり、ある程度物語に破綻をきたさない行動が出来かつ大人としっかりと対話ができる存在であるのが大きい。
そして、彼を正当に評価する大人の目線(お姉さん、アオヤマ君のお父さん、ハマモトさんのお父さん)が物語の随所でしっかりと描かれている。そのお陰で、アオヤマ君が、大人である我々が理解できる存在として成り立っている。
お姉さん、ペンギン、海の謎も程よく、アオヤマ君と一緒に考えながら作品を見られるというのも楽しみの一つだ。
最後に余談だが"夏感"の中でも私が好きだったのは、光の描写のこだわり。
水の描写が結構多いのだけれど、ちゃんと水に光が跳ね返っている感じが見て取れる。
あとは森のシーン。カメラの移動にあわせてしっかりと暗くなったり明るくなったりと木漏れ日がしっかりと書かれているのね。「あぁこれが夏ですよ」って気分になった。
余談
エンドロールの最後にアオヤマ君とお姉さんが背中合わせで座っている絵が出てくるんだけど、物語をすべて見終えた後のあの一枚が一番感情を揺さぶってきた。
小学生のアオヤマ君にとって、最後まで理想のお姉さんで居続けたお姉さん、大好き。