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【詩季織々】小説に映像が付いた感(感想:ネタバレあり)

shikioriori.jp

見てきた。

コミックス・ウェーブ・フィルムの新作。やはりどことなく絵柄に新海誠作品感がある。

世界観を共有した3つのショートストーリーが展開される、日中合同アニメ映画。調べてみると、中国の生活基盤である「衣・食・住・行」がそれぞれ3作品にテーマとして割り振られているらしい。

舞台はすべて中国の都市で、制作に中国のアニメ制作会社が関わっていることに興味を持ったので視聴。

 

タイトルにも書いたけれど、「説明し過ぎる映画かな」と思ってしまった。

動きや会話などで登場人物の感情を表現するのではなく、映像の裏で登場人物(主に主人公だけど)が考えていることを丁寧にナレーションで説明している。

 

良しあしはあると思う。ナレーションの言葉選びは美しく、主人公の感情がとても丁寧に語られているので、「この人は何を思っているのか」が明確にわかる。

しかし一方で、映像作品なのだから、皆まで説明せずとも、視聴者にゆだねて動作で感じ取らせる努力は必要なのではないか?という疑問を浮かぶ。

 

というわけで、「映像が付いた小説っぽい」と評価させてもらった。こればかりは完全に好みだと思うが、まぁ一般的な映像作品よりは明確に説明し過ぎだ。

 

各作品についてちょっとだけ感想を書いてみる。

「陽だまりの朝食」

イシャオシン 監督の作品。

一言で言ってしまえば、主人公がビーフンを通じて過去を振り返る話。

って書いてしまうと「なんだそりゃ」って思うかもしれないが、「食」を通じたエピソードって確かに鮮明に頭に残りやすいよなって共感はあった。

ナレーションがとても多くてビックリした作品。

 

「小さなファッションショー」

竹内良貴監の作品。

モデルの姉と服飾の勉強をしている学生の妹が二人暮らしをしている話。

姉は素敵な姉でいたし、モデルとしての活躍したい。若いモデルが台頭する中、焦りを感じた姉は無理をしてファッションショー当日に倒れるという失態を演じてしまう。

モデルとして復帰することを諦めようとしていた姉のため、妹が服をこしらえて復帰のチャンスを作ってあげました。

って話。

 

3作品の中では一番起承転結していて、物語としてすっと頭に入ってくる構成だった。日本人の価値観で一番理解しやすい内容の話だったと思う。監督が日本人ってのもあるかな?

 

「上海恋」

リ・ハオリン監督の作品。 

青春・恋愛・すれ違い⇒大人になってからの和解

という恋愛の王道を貫いている。

 

物語は大人になった主人公が過去を振り返る形で進行。

幼馴染の主人公とヒロインは仲良くいい雰囲気だったが、ヒロインが遠くの高校を受験することを決め、関係がぎくしゃくしてしまう。主人公も同じ高校を受験することを決めたのだが、同じ高校を受験することも、同じ高校に行きたいという思いも伝えられないまま。

結果、主人公は高校に合格し、ヒロインは不合格となってしまう。

しかし、ヒロインは主人公と同じ高校に行くためにわざと受験に失敗していた。という事実を、主人公が大人になってから知った、という話。

 

「どこかで見たことがあるなあ」という印象が拭い取れなかったので、感動ポイントが「やっぱり」となってしまっていたのが残念だった印象。

あとは結構恋愛感情はストレートな言葉で伝えてしまうんだなと思った。「友達以上恋人未満」ではこの言葉を使わないだろ?みたいなこってこてな好意を伝えているのとほぼ同義のやりとりが展開されていたのが面白い。

 

総括

新鮮な作品ではなく「どこかで見たことがあるなあ」という印象はぬぐい取れなったが、細かい描写ややり取りの中で、中国の文化や感性を感じ取れたのは面白かった。これもナレーションで丁寧に主人公の感情を描写しがちな全体の構成の恩恵であるような気がする。