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母親に「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」をオススメされる息子の気持ち

※この投稿はライトな下ネタを含みます。ご注意。

 

movies.yahoo.co.jp

この映画をご存じだろうか。

 

「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」という映画である。恋愛小説原作の3部作で、既に2作目の「フィフティ・シェイズ・ダーカー」まで実写化されている。

Wikipedia曰く「女子大生の主人公が、若く有能だがサディストの性的嗜好を持つ大富豪の男性と知り合い、BDSM(SM)の主従契約を結ぶという内容」とのこと。ずいぶん過激な内容である。当然のごとくR18である。

 

私も健全な成人男性なので「R18」という表記に全く心が躍らないかと言ったら嘘になってしまうが、この作品は見たことがない。というか、R18作品をレンタルビデオ店で借りてみたことが一切ない。「R18の作品を借りたら、R18な描写を目的に借りているのではないか」という自意識が作品との出会いの邪魔をする。変に洒落ているがゆえに、何だかアダルトビデオを借りるより恥ずかしい。

 

「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」についての印象はこうだ。

 

強烈に見たいわけではないが、見たらまぁそこそこ面白いであろうことは予想できる。しかしR18がゆえに手を伸ばしにくい。わざわざこの作品を見るのであれば、別にみるべき作品があるはずだ。

 

おそらく私の生涯はこの映画を見ることのないまま終わるのだろう。

そう思っていた。

 

さてここからが本題である。

私は齢25となるのだが、情けないことに未だに実家暮らしをしている(東京は家賃が高いし、給料は低いし仕方がない)。一般的な家庭である。必要以上に仲が良いわけでもなく、険悪なわけでもない。ただ家族として生活を営んでいる。

そんな当たり障りのない生活を共に過ごしていたはずの母親が、R18作品「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を視聴することを強烈に推薦してきたらどうだろうか。

 

ある日突然、親子冷戦の火蓋は切って落とされた(明確な喧嘩ではないが対立しているという意味で冷戦である)。リビングで二人で食事をとっていたときの出来事である。

 

「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイって映画が面白いのよ。日曜日返却だから、まだ見る時間あるでしょ」

 

一応私は映画ブログで記事をつらつら書いている人間である。その映画の存在はもちろん知っていた。しかし、その映画は下手に首を突っ込むには、母親と意見を交わすには危険な作品だ。

 

私は、すぐさまその話題を終わらせようとした。

 

「ふーん、面白そうな映画だね。時間があったら見てみるよ」

 

それで終わりでよかったはずなのだ。お茶の間で可愛らしい二次元の女の子が甘いセリフを吐き散らして去っていく15秒間と同じような対処法。恥ずかしがるでも嫌がるでもない、反応しないという最良の選択。


【CM】ガールフレンド(仮) 話題のクロエ・ルメール3本立て

↑母親とテレビを見ているときに反応に困るCMの例。しかし、クロエ・ルメールちゃんは可愛い。

 

しかし母親はこの程度では止まらなかった。

 

「18歳以上なんだからあなたも見れるわよ」

 

2連続で気まずいCMが流れた気分である。お茶の間は冷え冷えだ。

ファーストコンタクトよりはツッコミやすい内容なので、まだマシではあるが話がそういった方向性に進むことはもはや避けられない。


【炎上!放送中止】サントリー 頂 CM 絶頂うまい出張1/6 北海道編

↑「いやこれは狙ってるっしょw」と弄りやすいCMの例。面白いCMだから好きなんだけどね。

 

あなたも見れるわよ、って。人にオススメすることを趣旨とした記事を何本も書いているが一回も使ったことないぞそんなセリフ。小恥ずかしい言葉を使わず端的にR18であることを示した素晴らしい表現ではあるが、それを言われたら余計手を付けるわけにはいかなくなる。

これ以上無視を続けるわけにもいかなくなった私は次の手に出る。

 

「あーそうなんだ。見てみるから内容は言わないでね」

 

これ以上母親からあらぬ発言が飛び出ないようにするための私のファインプレーである。SM的な要素が多少なり含まれるであろう本作の内容について話されたら、たまったものじゃない。母親像が崩れ落ちて灰となり、その灰を吸引した私はアレルギー症状を引き起こすだろう。

 

しかし20年以上生活を共にした家族という存在は厄介である。

私があまり見る気がないことを察したようで、あらぬ方向から攻撃を仕掛けてきた。

 

「アダルトビデオじゃないんだから」

 

その軸でR18映画を語るな!!!

いや、その軸で見てしまうのはよく分かるんだけど、堂々と言うんじゃない!!!

 

おそらく彼女の言葉の後には、「恥ずかしくないわよ」が続くのだろう。

もう私は言葉を濁すしかなかった。「確かにね、ははは」。

アダルトビデオの有用性を語ることも、映画とアダルトビデオの違いを語ることも、頑なに見ないことも、R18を意識しているという私を母親に露呈していることとなり、それはすなわち息子からすると敗北であった。かといって、平気な顔して他の映画と同じようにリビングで視聴することに、私の羞恥心は耐えきれないだろう。それ以前に、映画を見てしまったら「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のR18のシーンが母親と共有されてしまうのだ。何だか、いやなのである。全国の男子諸君は分かっていただけると思うが、何だか、いやなのである。

 

見ても地獄、見ずとも地獄。

私は逃げるようにしてリビングを後にした。

いくつになっても親には敵わないのである。

私の母親は、単に面白い作品を息子に紹介しただけだったのだ。世の中に存在する多くの作品のうちの一つとして。性描写の有無で作品を評価しようとしている私よりもずっと上手である。

 

結局、私はまだ「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を見ていない。悠長に構えていたら続編「フィフティ・シェイズ・ダーカー」も母親が借りてきた。映画好きな母親が気に入っている以上、きっと面白いはずなのだが、家族という枷が私の視聴の邪魔をする。

 

早く大人になりたい。下らない自意識を捨てられるような大人に。

いつか、このブログで「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の感想を書けることを信じて、今日も私はアダルトビデオを視聴する。