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【オリエント急行殺人事件 (小説と1974版映画)】映像にする価値(感想:ネタバレあり)

 


映画『オリエント急行殺人事件』予告B

 

最近映画を見ると、いつも予告がやっていて気になっていた。

 

エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)が渋いおじさんでかっこいいなあって思っていたら、この人ポアロ役だけじゃなくて監督も兼任してるんだね。てか「マイティ・ソー」の監督かよ、見なきゃ!

 

って感じで。

www.foxmovies-jp.com

↑ちなみに「オリエント急行殺人事件」(2017)は、12月8日公開とのこと。

 

 

せっかくミステリの名作が原作の作品なのだから、ちゃんと読んでおこうと思って、本を手に取った。

 

オリエント急行殺人事件 (古典新訳文庫)

オリエント急行殺人事件 (古典新訳文庫)

 

 ↑これです。

 

僕はミステリが好きなのだけれど、海外文学に弱い。特に「オリエント急行殺人事件」のように、登場人物が多く全員名前がカタカナ(当たり前だ)だと人の判別が難しい。読んでいるのだが、内容が滑って頭に入ってこなくて困った。

しかし、どうにか読破したわけだ。オチもトリックも名探偵ポアロ氏が言っていたことを足りない頭で必死に咀嚼した。

 

しかしそれにしてもイメージが出来ない。じゃあ、せっかくだし実写映画を見てみよう。

というわけで、「オリエント急行殺人事件 (1974)」にたどり着いたわけだ。

 

もう「オリエント急行殺人事件(2017)」への準備は万全である。

まずは小説の感想を、最後のほうに映画(1974)の感想を書きたい。

あとは、最後に2017年版への期待をちょっとだけ。

 

この手の推理小説の記事については「ネタバレが見たくて読みに来たよ!」という方が非常に多いと思うので、泣く泣く解決篇のネタバレもしておくことにする。推理小説の感想にネタバレ書くのあまり好きじゃないんだけどね。

 

作品情報

僕は知らなかったのだけれど、「オリエント急行殺人事件」は「エルキュール・ポアロシリーズ」の9作目とのこと。

つまり、いきなり「オリエント急行殺人事件」を読むよりは、ポアロシリーズを1から読んでいった方が、少なくとも主人公についての理解は深まった状態で作品を楽しめるわけだ。

しかし安心してほしい。僕はポアロシリーズを1作も読んだことなかったが、内容がわからないということはなかった。一つの独立した作品として楽しむことが出来る。

 

ざっくりとしたあらすじは、「オリエント急行の殺人 - Wikipedia」を見てくださいと言った感じなのだけれど。

ポイントは、

◇探偵役はポアロ・彼の友人のブーク(ブック?)・コンスタンチン医師。

◇事件が起きたのはオリエント急行という寝台列車の一等客席。

◇雪の影響で線路上で立ち往生しているところ、ラチェットという人物が殺害される。

◇死因は刺殺。

◇殺害されたラチェットはアメリカで起きた幼女誘拐事件の犯人だった。

◇車両の行き来、列車からの乗降は事件発生時には不可能と判断される。容疑者は12人。

といったところだろうか。

 

その解決篇が特異であることから、「オリエント急行殺人事件」は有名な作品となったと言われているけれど、クローズド・サークル下での事件というのがその特異性を生み出している。

全くオチを知らずに読みだしたけれど、「なるほどこれは面白いなあ」と確かになった。

 

解決篇について(ネタバレ)

12人の証言をかみ合わせても、どうしても一人の犯人が浮かんでこない。

そこで、ポアロは2つの解を示す。

 

①第三者による殺人

前提をぶっ壊してるじゃないか!と僕もブーク氏同様に憤慨したのだけれど、時間のトリックでその前提をぶっ壊しており、大まかには矛盾はない。

 

しかし一緒に操作をしていたワトソン的な助手を務めたブーク氏が憤慨。

そこで、第2の解が出てくる。

 

②容疑者12名全員による共犯

捜査を進めるにつれて、全員被害者のラチェットに関わりがあり、彼に何らかの恨みを持っていることが判明。

順に12名が1回ずつ睡眠薬で眠っているラチェットを刺したというのがポアロの出した答え

全員が全員をかばっているから、特定の人物が犯人として浮かばなかったというわけ。

 

解決篇でポアロは2通りの解を示すのだけれど、オリエント急行を運営する会社の重役であるブークが①を採用すると決定したところで本作は終了。犯人12名は罪に問われずに済むのであろう。

 

解は二つともユニークなものだ。推理小説を読んでいる我々の盲点を突いている(容疑者全員が犯人/前提条件をひっくり返す)。それが1930年代に生まれたというのが一番の驚きだ。

 

映像化しても映えるわけ

この作品はポアロ氏がアクロバティックなアクションを繰り広げるわけではなく、単に事件が発生してから順に12名の取り調べを進めていき、謎を解決するというだけのものである。

 

推理小説なのだから、当たり前なのだが、現在のエンタメめいた推理小説と比べたら、ずいぶんと動きが少ない。

被害者死亡⇒取り調べ(ほぼ会話のやりとりだけ)⇒解決篇

なので、これは映像映えするのだろうか?と原作読了後はちょっとだけ不安になった。

 

まぁしかし、映画の方も見てみたけれど、しっかりと面白い。

ちゃんと12名の容疑者一人一人のキャラクターが立っており、それぞれにラチェットを中心としたドラマがあるからだろう。

 

原作で読んでいて気になったのが、かなり心理的な分析するアプローチが多かったこと。この人なら、こういう取り調べの仕方が良い、とか。あんな人が、殺人を犯すわけがない、とか。そういった会話がかなりの割合を占めている。だから自然と登場人物一人一人の掘り下げが出来ており、ヒューマンドラマとして成り立っているのだろう。

 

そして、名探偵ポアロ氏のキャラクターが濃い。鼻持ちならない、と言われているがその通りで、挑発はするわ自由だわで主役にするにはもってこいである。その相棒ブーク氏も一々彼の言動に反応しては物語を盛り上げてくれていてとてもよい仕事をしている。

 

動きはないにしても、人の感情を描写してしっかりと面白い作品に仕上げているのは流石名作家といったところだろうか。

 

映画版(1974)の話

映画版は基本的には原作に忠実であるが、やはり話の流れが分かりやすい。取り調べ中の細かい要素をそぎ落として、解決篇に一気に説明しきっている部分もあり、視聴者が混乱しないような配慮が出来ていた。

あとはラチェットが起こした誘拐事件を冒頭にひとしきり説明してしまっている(当然犯人がラチェットなのは伏せられているが)。これも物語がスムーズに頭に入るような丁寧な工夫だったと思う。

 

原作は結構重たいので、映画版を見てから原作を読むという順番の方が、推理小説初心者には安心かもしれない。

 

しかし、必要以上にポアロ氏の鼻持ちならない特徴が助長されており、決してポアロはかっこいい名探偵ではなく、「推理が出来る変人」のように描かれているのに注意してほしい。見た目もずんぐりむっくりだ。

2017版のポアロとはかけ離れているが、まぁ原作に近しいのはもしかしたら1974年版のポアロなのかもしれない。

 

ちなみに1974年版のポアロを演じたのはアルバート・フィニー

オードリーヘップバーン主演の「いつも2人で」にも出演。「いつも2人で」ではなかなかのイケメンだったのだが、こんな演技もできるのかと驚かされた(公開年は「いつも2人で」の方が7年ほど早い)。

 

映画版(2017年)への期待

http://www.foxmovies-jp.com/orient-movie/character.html

全く新しいエンターテイメントに生まれ変わる、そうだ。

 

素晴らしいキャストがそろっているので(ラチェット役がジョニー・デップなのは最高だな)、彼らの演技が楽しみでしょうがないが・・・

 

シナリオは変えなくて、いいと思うぞ?