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【古典部シリーズ】「氷菓」から「いまさら翼といわれても」まで順番に評価していく。(感想:ネタバレなし)

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氷菓が実写化するとニュースで見て、せっかくだしこれを機に古典部シリーズの既刊を読破してみようということで全部読んだ。

 

高校を舞台とした「日常の謎」を解決するのが本シリーズの基本。人の死なない幸せな推理小説。適度に愛着を持たせてくれる程度の、濃すぎず薄すぎないキャラ付で、シリーズ化やアニメ化に向いている作品だなと思った。

アニメは見てないけど、「えるたそ~」ってやつが流行ってたよね。あの気持ちはよく分かる。

品行方正なお嬢様が好奇心に負けて「気になります!」と爛々と瞳を輝かせる様はギャップ萌えの王道を貫いているからな。

省エネ人間ホータローも巻き込まれ主人公っぽい様相で、一定の人気がありそうな語り部だし。

自ら結論が出せないデータベースを名乗る里志も、ワトソン役として優秀。

摩耶花は・・・テンプレートな高校生らしい高校生を演じてくれている。古典部では一番フラットなキャラクターだと思う。

メインキャラクター4人のバランスがとれていて、読んでいて飽きない。

 

そしてもう一つ特徴的なのは、結構後ろ暗い話題が多いところ。ホータローはじめ古典部の面々が解決していく謎には、結構ドロドロとした背景があり、決して見ていて心地の良いものではない。特に摩耶花の漫画部関係の話は、ギスギスし過ぎて正直気分が悪かった(気分は悪いが、作品が悪くなるというわけではない)。

高校生がキャッキャウフフしているだけではない、「なんとなくリアルっぽいなぁ」と感じさせてくれる人間の汚さの露呈が結構好きだ。

 

シリーズ全体の総括はここらにしておいて、作品ごとの感想を手短に書いていこう。 

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

 

 シリーズ1作目。

主要人物4名のキャラクターがしっかりこの1冊で立っており、続編への下地を作ったという意味で素晴らしい作品だった。

章がいくつもあって、各章で細やかな謎を解決しつつも、表題にある「氷菓」の謎という大きなゴールに向かっていく構成。4作目の「遠回りする雛」、6作目の「いまさら翼といわれても」は明確な短編集だが、「氷菓」も短編の連なりで大きな1つの作品となっているという意味では短編的な側面もあり、とっかかりやすい作品である。ノンストレスで読めるのは素晴らしい。

 

ヒロインえるたその親戚にあたる関谷さんが失踪した理由を探る、というのが「氷菓」のメインテーマ。正直なところを言うと、関谷さんの失踪理由の究明よりは、こまごまとした謎(勝手に部室のカギが閉まった、毎週図書館のある本が借りられている、文集「氷菓」がどこにあるのかを探す)のほうが面白かった。

古典部の文集がなぜ「氷菓」になったのか、が本作のオチなのだが、これを考えながら読み進めると面白いと思う。僕は関谷さんの学校への立ち位置が物語中で明らかになったところで、「氷菓」の意に気づいた。

 

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

 

 2作目。脚本が失われたミステリー映画の結末を、途中まで撮影された映像をもとに究明していくというトリッキーな内容。人が死なない系の学園×推理小説ではあまりできない、殺人現場の考察などが盛り込まれており、なるほどこの手で来たかと思わせられた作品。

 

省エネ人間ホータローが、自ら探偵役に自覚を持つという心の動き、しかし結局のところ人間は変わらないんだなってところが本作の見どころだろうか。映画のオチの考察については、あまり心がそそられなかった。

クドリャフカの順番 (角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

 

 6シリーズ刊行されているが、3作目の「クドリャフカの順番」が最もクオリティが高いと思っている。このシリーズを読み進めてよかった、と思えるほどに傑作だった。

舞台は学祭。古典部の文集「氷菓」を予定より多く刷り過ぎてしまい、それらを販売するために古典部の4人が奮闘する話。かと思いきや、学祭に出店している部活の備品が順に盗まれる「十文字事件」が発生し、さらに摩耶花が兼部している漫画部のいざこざまで扱っている。

素晴らしいのが、これら全要素が互いに影響し合い、全てが解決する形で、一つの結末を迎えること。よく考えられたプロットだなあと感心した。

あとは、一人称がコロコロと変わるのが良い。ホータロー以外の古典部の人物が、一人称視点で何を考え、行動しているのかをしっかりと読めるのは本作が初めてだ。

里志がしっかりとワトソンをこなし、ホータローに解決をパスするチームワークが鮮やか過ぎて称賛を贈りたい。

 

 

遠まわりする雛 (角川文庫)

遠まわりする雛 (角川文庫)

 

 初の短編集。それぞれの話が完全に独立しているので、手軽に読めるのが良い。

表題の「遠回りする雛」と「手作りチョコレート事件」が見どころ。えるたそとホータローの関係の変化、そして里志と摩耶花の曖昧な関係の答えが楽しめる。

 

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

 

 2年生になったホータロー達。古典部へ仮入部した大日向さんが入部するのをやめた理由をホータローが解明する。

 

学校の長距離走大会的なものに参加するホータローが、走りながら過去を思い出したり、同じく走っているえるたそや摩耶花、実行委員の里志と話したりしながら、原因を突き止め、最後に大日向さんと合流して答え合わせ・・・って感じの話。

人間関係の暗い部分がそこらに散見され、なかなか気分よく読み進めることが出来ない作品だった。時系列が頻繁に前後するので、頭の悪い僕じゃなかなかうまく読み進められなかったというのもあるけれど。

 

 

いまさら翼といわれても

いまさら翼といわれても

 

 一番最近に発売された短編集。こちらも全話完全に独立した話。古典部の面々の新しい側面が見れる短編が揃っている。全話面白かった。

収録されている短編は下記の通り

「箱の中の欠落」

ホータローと里志の仲良しシーンが見れちゃう

 

「鏡には映らない」

ヒーローなホータロー。流石主人公と思える一作。

 

「連峰は晴れているか」

これもホータローの性格の良さが現れている。

 

「わたしたちの伝説の一冊」

摩耶花が漫画部を退部したエピソード。彼女の覚悟が見て取れる。

 

「長い休日」

ホータロー省エネ主義誕生の謎が明かされる。

 

「いまさら翼といわれても」

えるたそ失踪。彼女の将来への思いが語られる。

 

こんな感じで、ホータローがどういう人間なのかを掘り下げた作品が多めだろうか。

「鏡には映らない」は今までの短編の中で一番好きだった。よく考えられているし、ホータローの人の好さが滲み出ている。

 

以上、古典部シリーズの雑感でした。

 

一応映画の話がメインのブログなので、「氷菓」実写化について言及しておくと、「氷菓」よりも「クドリャフカの順番」の方が映画作品には向いていると思う。

最近の原作がある映画作品にありがちな、「ドラマ形式で別エピソードを配信し、映画も公開する」という形式で実写化すればよいのに。「氷菓」と「愚者のエンドロール」までドラマで配信して、「クドリャフカの順番」を映画化。「氷菓」は短編寄せ集め系長編だから、映画には向かないと思うんだけどなあ・・・。

 

クドリャフカの順番」を映画館で見たい。