【パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊】バルボッサが主役(感想:ネタバレだらけ)
見てきた。
5作目になる本作。1から見続けてきたからある意味惰性で今回も足を運んだわけだけど、期待以上の出来の良さでびっくりした。3作目の「ワールド・エンド」の正統な続編で、「これで完結でいいんじゃないか?」と思えるほどきれいにまとまっていた。
3作目の「ワールド・エンド」で綺麗に物語が完結したと思って、「もうここまでしか見ないでいいや」と思っている人にこそ見てほしい。ファンこそ楽しめる映画だったと思う。
いきなりネタバレ込みで感想を書いていくので、注意してほしい。
僕が「好きだ」と思ったポイントは
②バルボッサ船長がかっこいい
③原題の良さ
ってところかな。それについて書いていくぞ。
ちなみに、主人公であるジャック・スパロウは今回かなり引き立て役に回っていたような気がする。公式では「誕生の秘密が明かされる」とあるが、あまりそこは物語の中核を担っているわけではなかった。準主役たちが主役を食っている映画だったね。
ウィル・ターナーとヘンリー・ターナー
初期3部作で主役級の活躍を果たしたオーランド・ブルーム演じるウィル・ターナー。「ワールド・エンド」ではエリザベスと結ばれたが、フライング・ダッチマン号の船長となり10年に1度しか陸に上がることが出来ない呪いをかけられてしまった。
「ワールド・エンド」のエンドロール後の映像でウィルがエリザベスに会いに現れるシーンが描かれていたのが印象的だったね。
4作目の「生命の泉」では一切彼のその後について語られなかったけれど、本作は彼がキーパーソンとして描かれている。というか、ウィルの息子、ヘンリー・ターナーが物語の中心人物として登場するわけだ。
ヘンリーは父親の呪いを解くことが出来ると言われている「ポセイドンの槍」を探し求めて、ジャックと手を組むことになるのだけれど、物語における彼のポジションが1~3作目のウィル・ターナーを見ているようでとても楽しかった。
◇ヘンリーは対等に渡り合おうとするのだけれど、やっぱりジャックが常に上手。
◇本作のヒロイン、カリーナにはうだつが上がらない。
流石親子といったところだろうか。作品としてはシリーズのオマージュに成功していると言える。「あぁ、これがパイレーツシリーズだよな」と思えるようなキャラクターのやり取りが随所に見られたのはファンとしては嬉しいところだろう。
また、物語の結末も「ワールド・エンド」で果たせなかった真のハッピーエンドとなっていて、幸せな気分で映画館を去ることが出来るぞ。ちゃんとウィルの呪いは解けて、彼はエリザベスと一緒に暮らし始める。息子のヘンリーも、カリーナといい感じだ。親子そろってラブラブでいいですねえ、って感じ。
ちなみに、エンドロール後にダッチマンの船員と思われる怪物が寝室に侵入する映像が流れたけれど、あれはどういうことだろうね。そういえば本作ではウィルの父親ビルについては一切言及されていなかったけれど・・・。あの影は彼だったのだろうか?
正直次回作への伏線を張るのはいいのだけれど、ダッチマンの呪いについてひっぱる?とは思った。そこは「幸せに二人は暮らしました」、でよかっただろ。でもまあ本編は完璧なエンディングを迎えていたので、そこについては目をつぶろう。
バルボッサの雄姿
1作目から敵役でありジャックのライバルでありある意味仲間であったキャプテンバルボッサ。本作は彼が主役を食うほど活躍してみせる。
本作のヒロイン、カリーナは実はバルボッサの娘であり、ラストシーンでは彼女を庇うために敵と一緒に海の底に沈むのだ。従来の4作では、良くも悪くも最も「海賊らしい海賊」で一貫したキャラクターを築いてきたが、良い意味で「最後の海賊」でそのイメージを崩してきた。
海賊である以前に、娘を思う一人の父親であったバルボッサの人間らしい一面を本作で見ることが出来る。
財宝を追い求めて海賊として生きてきた彼が、死に際に娘を「宝」だと言って海に落ちていく。ちょっとうるっときてしまった。カリーナが日記にはめ込んであったルビーの欠片を、島に設置するときに「きっと父親も喜んでいる」といったあの温かい表情も。
ちなみに、「最後の海賊」ではバルボッサは自らを「キャプテンバルボッサ」と称さないし、他の登場人物も彼をバルボッサと呼ばずに「ヘクター」と呼んでいる(僕の記憶が正しければ)。
バルボッサという名称に慣れていた僕は最初「ん?」と違和感を抱いていたのだけれど、バルボッサが海の底に沈んだ後に娘のカリーナが自らを「バルボッサ」と称した瞬間、「あぁこれがやりたかったんだな」と納得した。憎い演出だよね。
原題が最高
邦題は「最後の海賊」となったが、皆さんこの映画の原題をご存じだろうか。
原題は「Dead Men Tell No Tales」、「死人に口なし」という意味なんだそうだ。
僕はこの原題が素晴らしいと思っていて、作中でも本作の敵役であるサラザールが冒頭にそのセリフを言っている。
「死人は何も釈明できない。」サラザールが生き証人を残す理由でもあるが、この映画の結末を見るとまさしく「A PIRATE'S LIFE」のありかたそのものを表している言葉だと思った。
バルボッサは死んで、当然彼は父親と娘としてのやりとりを楽しむことは出来くなった。一方生きたヘンリーとウィルの親子は再会を果たすこととなる。海賊であることの辛さが現れている言葉こそが「Dead Men Tell No Tales」。解釈を広げ過ぎかな?「死人に口なし」はそんな意味では使われてないからね、日本では。
まぁそれでも、残ったバルボッサの日記が、娘の元に戻ってきて、彼女が父親との絆を感じるのは良いオチだった。言葉なくともつながるものはあったと。
邦題になると大体「最後の~」とか「はじまりの~」とか「~の奇跡」みたいな汎用的な言葉を使いがちだけれど、もっと原題へのリスペクトをした方が良いよね。タイトル含めて、作品だしさ。
今回はこんな感じで。いい映画だったのでぜひ見に行ってみてね。