【夜明け告げるルーのうた】FLASHアニメでダンスシーンすげーぬるぬる動く(感想:ネタバレなし)
見てきた。
一度終演してしまって「見逃した!」とショックを受けていたのだけれど、何ともなしにTOHOシネマズの上映作品一覧を見ていたら復活していた。
公式サイトを見ると分かるけれど、
アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門のグランプリにあたるクリスタル賞を受賞しました!
らしく、
凱旋上映劇場決定!
というわけで、TOHOシネマズ新宿をはじめとした複数の劇場で6月24日から凱旋上映をしているようだ。見逃したみんなも、今がチャンス!
で、今回はネタバレなしの感想を書こうと思う。
滅茶苦茶面白かったし、オチが素晴らしかったのでネタバレしないで見たほうが楽しめると思うから。
「何が良かったか」、「(友人から仕入れた)ちょっとした小ネタ」を中心に書いていこうと思う。
スタッフとかストーリーとか
詳細は、公式サイトの「INTRODUCTION」を読んでいただきたいのだが、
監督:湯浅政明さん
ここが重要である。つい最近「夜は短し歩けよ乙女」が公開していたが、それも彼の監督作品。「夜明け告げるルーのうた」は彼の完全オリジナル作品。
独特のカメラワーク、遠近図法、キャラクターがすごく動く。彼の作品は共通してそんな魅力があるのだけれど、「夜明け告げるルーのうた」も余すことなく彼の長所が炸裂していた。
↑「夜は短し歩けよ乙女」について感想も書いたんだけど、彼の作風については触れていなかったね・・・。可愛いとしか言ってないじゃん。
ストーリーは簡単に言うと
①暗い性格の主人公カイが、友人からバンドに誘われる
②ミュージックとダンスが好きな人魚ルーと出会って明るさを取り戻すカイ
③人魚であるルーの存在が町のみんなに知れて大騒ぎ
といった内容だ。
では、さっそくネタバレしない程度にこの映画の魅力を語っていくぞ。
ぬるぬる動くダンスシーン
記事のタイトルにもしたのだけれど、湯浅監督の作品はキャラクターが良く動くから見ていて楽しい。そして、この映画で重要な意味を持っている音楽とダンスと、彼の柵がの相性が抜群。ストーリーも良かったんだけど、絶えず視覚的に聴覚的に楽しい映画だったのが印象的。
多少ネタバレになってしまうけれど、この動画を見ればルーが躍っているシーンが見れる。
『歌うたいのバラッド』が心にしみる、湯浅ワールド全開の本編映像公開!『夜明け告げるルーのうた』
しかし本領はここではない。ルーに釣られて町のみんなが躍る、というシーンがあるのだけれど、その時の動きが俊敏なのだ。並大抵のアニメーションじゃ再現できない域なほど。
で、その理由を探ってみたら、インタビュー記事にあった。
全編Flashアニメで制作しているので、動きがなめらかで線が綺麗とのこと。ダンスシーンだけじゃなくて、ルーが操る水の描写もその特性が活かされているみたい。
Flashアニメって何?みたいな注釈が上記のインタビュー記事にあったので、そちらは引用しちゃう。
Flashアニメ…アドビシステムズが開発しているソフト「Adobe Animate」を使用して作った「Adobe Flash」規格のアニメーションのこと。点の座標とそれを結ぶ線によって絵を描画しているため、動きの始点と終点の絵を決めれば、その間は非常になめらかに動かすことができる。絵を拡大・縮小・回転しても画質が変化しないのもメリットのひとつ。
とのことだ。
普通のアニメは絵を動かすために「パラパラ漫画」と同じ原理で動きの過程を描かなければいけないけれど、Flashアニメではそういうのが必要ない・・・ってことだと思う。
これは小話だけれど、エンドロールのスタッフさんの数が少なかったのはそういうことなのかもしれない。少ない労働力で、あれだけの動きを見せれるんだから技術ってすげーよな。
ちなみにこんな記事もあった。定時帰り、土日休みで作る。
僕がSHIROBAKOで知ったアニメ業界の厳しさを技術でひっくり返しているじゃないか。
↑血のにじむ創作の世界を描いた作品「SHIROBAKO」。そんな働き方も過去の遺物になる・・・かも?
閑話休題。
「夜明け告げるルーのうた」は視覚的に楽しい映画だよ、ということがまずは言いたい。
ストーリーの完成度とキャラクターの掘り下げの両立
「キャラクター掘り下げられていない作品はストーリーの完成度高いって言えないだろ」みたいな考え方もあると思うけれど、意外と「プロットはスゲーいいけれど、キャラクター持て余してるし感情移入できない」みたいな作品もあるし、当然ながら「キャラクターイケてるけれど、ストーリーは普通」みたいな作品もある。
「夜明け告げるルーのうた」は完璧に両立していた。
人間と人魚の友情を描く王道のストーリー。人との触れ合いを通じて主人公が変わっていく様が清々しい。
そして、人魚が危険をもたらすという伝説が残っている閉塞感のある町「日無町」が、物語の最後にどのように変わっているのか。その演出が憎いほどに愛おしい。とてもいいラストシーンだから、楽しみにしていてほしい。
そして、多くのキャラクターがいる中、ほぼ全員の個性が立っており、一切持てあますことなく物語を完結させたのもポイント高い。物語の軸はカイ・遊歩・国夫ら人間の子ども達とルーの関係性なのだけれど、
◇人魚を憎んでいるカイの祖父とタコ婆がいかにして彼らを許したか
◇カイの父親がいかにして息子と向き合うか
をさらっと時間をかけずに、かつ納得のいく形でしっかりと描けていたのが良かった。
昔話や登場人物の回想シーンは絵のテイストが変わるのだけれど、そのメリハリが冗長な印象を払拭していたんじゃないかな、と思う。
その他小ネタ
◇オープニングが好き
「夜は短し歩けよ乙女」もそうだったけど、オープニングへの入り方とその映像がとても好き。やっぱりタイトルが出るシーンの見栄えが良いとぐっと物語に入りやすくなるよね。
◇ルーのパパはハマり役
篠原信一さんが声を担当した「ルーのパパ」。見る前は「絶対声出す度に彼の顔が浮かんできて辛い」と心配していたけれど、ルーのパパは喋らないので安心してほしい。言葉にならない声を上げていたのだけれど、結構それが良い感じだった。声にミスキャストは一切なかった。
名曲。多くの人にとって馴染み深い既存の曲を主題歌に据えたのは良い判断だと思う。感情移入できる。
以上、「夜明け告げるルーのうた」感想でした。
面白かったので、ぜひ見に行こう。