【LOGAN/ローガン】X-menシリーズっぽくないという誉め言葉(感想:ネタバレあり)
見てきた。
マーベルスタジオの作品が好きなので、X-menシリーズも一応全て見てはいるが、凄く思い入れがある!というわけではない。
「シリーズ1作目から見てきたし、次も見るか」を続けて今に至る。時系列が前後したりパラレルワールドに突入するものだから、なかなか追っかけるのが難しいのだ。
今のところX-menシリーズで面白かった作品を挙げるとしたら、「ファースト・ジェネレーション」と「デッドプール」なのだけれど、ぜひともこのラインナップに「LOGAN/ローガン」も入れたいところ。
まぁ要は面白かったってことだ。感想を書いていくぞ
本作のローガンは"ヒーロー"ではない。(まだネタバレなし)
特徴的なのが、本作のローガンは世界を救うヒーローではないということだ。一人の孤独な男性として描かれている。
舞台は2029年、ミュータントの大半が死滅した世界。ローガンはキャリバンというミュータントと、チャールズの介護をしながらひっそりと暮らしている。そんなローガンのもとにローラという少女を保護してほしいという依頼が来るが、彼は「面倒ごとはごめんだ」と突っぱねる。
そう、一度断るのだ。そして、依頼主が大金を払うと言うと、ようやく承諾する。かつて何度もX-menとして世界を救ったヒーローとは思えない行為。冒頭からそんななので、ローガンがただのくたびれたおっさんになってしまったことを強烈に頭に擦り付けられる。しかも、全盛期の治癒力も衰え、戦闘にもキレがなくなっており、特別に強いというわけでもない。
結果的にその依頼主は殺害されてしまい、ローラとチャールズと一緒に「ノースダコタ」を目指すことになるというのが、本作のあらすじ。
もちろん残虐な敵がローガン達を追いかけており、途中何度か戦闘シーンが挟まるのだけれど、父親的なポジションであるチャールズと、娘的なポジションであるローラ、そして人生を終わらせたいと思い心を閉ざしているローガン。そんな3人のロードムービーであるとも言える。
気の良いおじいちゃんのチャールズが、無口で残虐性を秘めているローラと、人生の倦怠期を迎えているローガンの心を解かしていく。束の間の暖かいやり取りがありながらも、敵は容赦なく迫ってきて悲劇に見舞われる。アメコミ原作の映画として抑えるべき部分を描きながらも、ヒューマンドラマっぽく仕上げているバランスの良さがお気に入りだ。
公式サイトを見てもわかる通り、「アメコミ映画とは思えない~」みたいな宣伝文句が飛び交っているが、理由はそれにあると思う。あくまでも人間と人間の交流を描いた映画であり、ご都合主義が一切ないシリアスな内容となっている。
だから、X-menシリーズらしくないと僕は思ったし、なんならシリーズを見ていない人でも楽しめそうだな、とさえ思った。
さて、これからはネタバレ込みの感想になるぞ。
それでも、ローガンは最後ヒーローになる。(ネタバレあり)
前述したが、「ローガン=ヒーローではない」という視聴者への刷り込みシーンが多い。冒頭は道端の不良との戦闘に苦戦し、ローラの保護を一度拒否し、老眼が進んでいて近くのモノは眼鏡をかけないと見れない。それだけでなくローラが持っていた「X-men」のコミックを見て、「こんなものはフィクションだ」と本人がヒーローを否定する悪態をついている。
こういうシーンの積み重ねで、ローガンはもはやヒーローでなく、ただの中年になってしまった、という印象を強烈に残している。
中でも衝撃的だったのが、道中ローガン一行を家に招待したファミリーが、X-24(ローガンのクローン兵器)に襲われたシーン。結果的に家族は全滅、しかし一家のお父さんが最後の余力を振り絞ってX-24を車で轢き、銃で頭を撃ち飛ばすのだけれど、その直後のローガンへの対応が頭に残って離れない。
ローガンはX-24と闘い、自分をかくまってくれた家族を守ろうとした。しかし、死に際でお父さんはローガンを銃で撃ち抜こうとするのだ。既に弾切れだったため、不発に終わったが、この行為はなかなかに重い。
守ろうとしたものにさえ、銃口を向けられる。ヒーローじゃないどころか、一般人からしたらただの化け物でしかない。ローガンの立場を地の底に叩きつけているのだ。
だからこそ、ラストシーンが映える。最終的に、ローガンは自らの命を犠牲にしてローラを救い、ローラはミュータントの仲間と共にアメリカから亡命することに成功した。
で、物語のラストにある埋葬シーン。ローガンの墓に建てられた十字架を、ローラが横にして「X」の形にする。
最高の演出だった。ローラにとって、父親的な存在であるローガンは、ヒーローであったことを表しているのだ。このラストシーンのためにこの映画が存在したと言っても過言ではない。
ちなみに、ローラの仲間の一人が、ウルヴァインのお人形を持っていたのもなかなか良かった。
一見、アメコミ映画とは違うように感じられるが、一度ただの中年に落ちぶれたローガンが、他者(チャールズやローラ)との絆を取り戻し、ヒーローに舞い戻っているのだ。まさしく王道のヒーロー映画。これも前述したが、ちょっと捻っているだけであり、あくまでもヒーローを描いた映画から外れなかったのがこの映画の良いところである。
ローラがとてもいい味を出している。
本作のヒロイン?であり、ローガンの遺伝子を受け継いだ娘的ポジションのローラがとてもいい仕事をしている。演じているダフネ・キーンちゃんは、本作が映画デビューらしいが、とんでもなく良い映画をしていた。天才かよ。
まず、本作の大きなテーマとして、ローガンとローラの父娘的な関係があるのだけれど、ローラがローガンよりもずっと大人なのが面白かった。一方的にローガンがローラを守るのではなく、お互いに支え合っている関係。
序盤はローガンがローラを守る、常識を教えるというパワーバランスとなっていたが、
中盤以降その関係がガラッと変わる。
恩師であるチャールズが亡くなり、埋葬した直後にそっとローガンの手を握ったローラの大人の対応。それに対して、車に八つ当たりをし、挙句の果てにその場で倒れ込み医者に搬送されるローガン。その後、ノースダコタまで運転をしたのもローラ、その間ローガンはずっと寝ている。
ローガンがローラを救っている立場かと思ったら、チャールズが亡くなってからはローガンが逆にローラに救われている。与え与えられるような関係、その絆をバランスよく描いているのもよかった。
話は変わるが戦闘シーンもとてもよかった。可愛く小さい女の子がぴょんぴょん跳ねながら的確に敵の急所を爪で貫く様は壮観である。ローガンの大振りでパワフルな戦闘とは違い、ローラはちょこまかと素早く動きながら敵を刺していたので、アクションの見栄えが全く違う。二人が並んで戦っているシーンもあったが、対照的でなかなかおもしろかった。まぁここら辺は流石X-menシリーズと言ったところだろう。
完璧なエンドロール
本作が、ウルヴァリンシリーズ最終作らしく、ヒュージャックマンがローガンを演じるのも最後とのことだ。
で、気になったのがエンドロール中の映像。いつものX-menシリーズのようになんかしら次回作に繋がるような映像を挟んでくるんだろうな、とは思っていたけれど、結局何も流れなかった。
最終作らしいエンドロールだった。エンディングが完璧だっただけに、余計な映像が入っては興ざめだからな。よく何もせずにとどめてくれた。
というわけで、「LOGAN/ローガン」の感想でした。