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定時後に映画館

仕事の片手間に映画の話をします。

【愚行録】「仕掛けられた3度の衝撃」はどこだったのか。(感想:ネタバレだらけ)

映画

愚行録を見てきた。

gukoroku.jp

 

内容がえげつないので決してデートムービーとしては向いてないが、終わった後の議論が盛り上がることこの上なしな映画なので、ぜひとも友達と一緒に行ってほしい作品。

 

「人と共有したくなる系胸糞悪い映画」としての魅力を語っていくぞ。

「本当にこんな人いたら嫌だ」だらけで胸糞悪い(ちょいネタバレ)

まずは、公式HPのストーリーを転載しておきます。

エリートサラリーマンの夫、美人で完璧な妻、そして可愛い一人娘の田向たこう一家。絵に描いたように幸せな家族を襲った一家惨殺事件は迷宮入りしたまま一年が過ぎた。週刊誌の記者である田中
(妻夫木 聡)は、改めて事件の真相に迫ろうと取材を開始する。

殺害された夫・田向たこう浩樹 (小出恵介) の会社同僚の渡辺正人
(眞島秀和) 。 妻・友希恵 (松本若菜) の大学同期であった宮村淳子 (臼田あさ美) 。 その淳子の恋人であった尾形孝之 (中村倫也) 。
そして、大学時代の浩樹と付き合っていた稲村恵美 (市川由衣) 。

ところが、関係者たちの証言から浮かび上がってきたのは、
理想的と思われた夫婦の見た目からはかけ離れた実像、そして、
証言者たち自らの思いもよらない姿であった。
その一方で、田中も問題を抱えている。
妹の光子 (満島ひかり) が育児放棄の疑いで逮捕されていたのだ――。

 

「関係者の証言」のつなぎ合わせの前半、そして事件の真相を田中兄妹の視点で明らかにする後半という構成。キャッチコピーの「仕掛けられた3度の衝撃」は後半部分にぎゅっと詰め込まれている。

 

「愚行録」の魅力は

①関係者の証言で描かれる人間が「本当にいそう」でとても気持ち悪い。

②これら関係者の証言がつなぎ合わされた結果、事件の真相が明らかになる精緻なパズルが完成されていく感覚

だと思う。

どちらかというと、僕は①の部分が気に入っていて、「良い人々」とされていた田向浩樹と田向友希恵が、汚い部分を人間関係の中で露呈していく様がとても面白いし、徹底的に胸糞悪い。大学や会社を舞台に、彼らが人間関係でマウントを取るために人間を利用していく様が清々しいぐらいだ。

また、田向夫婦だけではなく、彼らを語る登場人物もどこか屑めいていて、人間として壊れているのが良い。彼らの多くは田向浩樹と田向友希恵に利用された「被害者」なのだけれど、「被害者」という可哀想な立場に甘んじられない程度には人間的に問題を抱えている。

ここのバランスがとてもよくて、登場人物が皆屑であってくれるがゆえに、「あの人がかわいそう」的な気持ちを持たずに、誰にも感情移入することなく、フラットな視点で人間の悪意ある汚い活動を観察できる。「胸糞悪い」が、見ている側は心を傷つけられない。

 

こんな人間にはなりたくないという反面教師的ムービーにもなりえるし、こんな人間がこの世の中に少なからずいるという絶望を知れる映画でもあるのだ。

断片的な人の証言が繋がったときの快感(以下ネタバレ)

魅力の②に書いたが、いろんな人の証言が、あるタイミングで、事件の終息に向かい一気に収束していく。

それが、田中妹が田向友希恵と関わっていたという事実であり、そこから田中兄妹は事件の傍観者から関係者に立場を急激に変える。

ここからが「仕掛けられた3度の衝撃」の見せ場であり、ミステリらしい展開の連続だ。

前半の人間の悪意を丁寧に描いたパートから、謎の収束を一気に行う後半への移行。一つの映画で2度楽しい、的な魅せ方がたまらない。長めの映画だけど、最後まで飽きないで見れる仕組み作りが出来ているなあと。

「仕掛けられた3度の衝撃」とは?(完璧にネタバレ)

映画を見終わった後、「3度の衝撃」ってどこだったんだろう?と首を捻った。

なんというか、衝撃と言えるタイミングはかなり多く、3度に絞るとすればどこなのか明確に答えが出ないのだ。

 

僕は、以下3つが公式の指す「衝撃」だと思う。

1度目 田中兄が宮村淳子を殺害

2度目 田向夫婦を殺したのは、田中妹

3度目 田中妹の父親は、田中兄

 

前述したけど、田中兄妹は基本的に事件の蚊帳の外だと思っていたから、急に巻き込まれていき、一番人間として狂っているのが兄妹だったという展開には衝撃を受けた。

1度目の衝撃は、田中妹が田向友希恵と関わりがあったことかな、とも思ったけど、主人公が人平気で殺しちゃってる方が明らかに異常なので、おそらく公式的には「宮村殺害」かなあと。

 

こういう考察ができるって楽しみを与えてくれるキャッチコピー素敵だと思う。

その他、いろいろ謎が深い。

かなり解釈が難しい映画で、ここはどうだったんだろう?というのを整理するのが楽しい映画だった。

僕が感じた疑問は

①そもそも田中兄は、田中妹が田向夫婦を殺害したことを知っていたのか。

→知っていないとしたら、1年前の事件を追う理由がよくわからない。

→知っているとしても、なぜ追うのかわからない。

 (妹逮捕がきっかけで、警察にばれていないか不安になったから?田中兄が書いた記事は、犯人像を妹とは全く違う人間としていた可能性が高い、宮村殺害も「田中妹が疑われたから」という動機付けができる、など、「知っていた」説の方が説明が付きやすいかも)

②稲村の息子は?

「似てきたでしょ?」の言葉を深読みすると、「父親に似てきたでしょ?」という意味にも捉えられる。あのセリフの後の変な間はなんだったんだろう?

田向浩樹と別れた後も交際してて、父親は彼だったとしたら、田向の軽薄さに磨きがかかって面白い。

③田中妹が母になったタイミング

時系列の整理が必要なのだけど、

1年前 : 田中妹、田向一家殺害

半年前 : 田中妹と兄が一度会っている。それ以来会っていない。

現在 : 田中妹に兄が面会するシーンから、物語スタート

 

田中兄妹間の子どもの年齢はよく覚えてないが、0歳~1歳だとしても、兄と妹が行為に及んだのは最低でも1年以上前。田向一家を殺した頃には、命を宿していた可能性が高い。

いつからそのような関係になっていたのか。半年前に兄と妹が会ったときには、何があったのか。田中妹の精神状態はどうなっていたのか。

物語の中心に食い込んできたタイミングがちょっと遅かったので、田中兄妹の深堀があまりできていなかったのが、少々残念ではある。

では本を読もう

人間をとてもよく描けていたし、ミステリとしても完成度が高い。謎も多く話が弾む。最高の映画だったと思った。

しかし、補足したい情報が多すぎる。

どうやら原作があるようなので、こっちも合わせて読んでみようと思った。